Ken's Veterinary Clinic Tokyo
相談専門 動物クリニック

                               



































狂犬病予防法

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC1000000247

 誰でも読めます。緊迫感の感じられる、なんとも恐ろしげな内容の法律です。








狂犬病ウイルス 特徴ある砲弾型です。

https://www.nationalgeographic.com/science/phenomena/2014/09/25/how-to-rid-the-world-of-rabies/




参考になるサイト
国立感染症研究所 狂犬病とは

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/394-rabies-intro.html





youtube にてrabies の語で検索すると、人間の感染患者の悲惨な映像が多々みつかります。インドなどでは日常茶飯の模様で、街角で狂乱状態に陥った、子供、壮年、老人の痛ましい姿を人々が取り囲んで見ているシーンが映し出されますが、患者はその後2〜3週間後には気の毒ながら亡くなっている筈です。嚥下困難となり水を飲むことが出来なくなるのが特徴的です。狂犬病がイヌに蔓延している状況ですが、これが21世紀の現在だと信じられますか?周辺国挙げての飼育犬の登録とワクチン接種義務化、野犬の徹底した淘汰以外にこの悲惨な感染症を無くす道は無さそうです。







厚生労働省検疫所
狂犬病発症2例目!!
 (フィリピンから10月22日に一時帰国の横浜市男性)

平成18年11月22日
狂犬病を発症した患者(輸入感染症例)について

 今般、フィリピンより帰国した横浜市の男性が、現地で狂犬病ウイルスに感染し、国内で発症したことが確認されましたので、その経過等についてお知らせします。

1.患者に関する情報
@ 年齢・性別 60歳代 男性
A 経過
10 月22 日フィリピンより帰国。
11 月15 日風邪様症状と右肩の痛みが発現。
11 月19 日A病院を受診。点滴及び血液検査を受け帰宅。夕方薬を服用しようとしたが、飲水困難となる。夜になり呼吸困難を呈する。
11 月20 日A病院に再度受診。興奮状態となり、恐風症状及び恐水症状を呈していることから、狂犬病の疑いがあるとしてB病院に転院。
11 月22 日現在、人工呼吸器を装着。

B 感染原因
 当該患者は、フィリピン滞在中(8月頃)、犬に手を咬まれており、これにより狂犬病に罹患したと判断される。なお、現地における暴露後のワクチン接種は受けていない。

2.検査に関する情報
  国立感染症研究所において、PCR法による病原体の遺伝子の検出を試みたところ、狂犬病ウイルス遺伝子を確認。

  以上の検査結果及び臨床症状等を踏まえ、担当医師により狂犬病と診断され、今朝、管轄保健所に感染症法に基づく届出がなされたものである。

3.厚生労働省の対応
  輸入感染事例の報告を受けて、検疫所等における渡航者向けの一層の注意喚起を行うとともに、医師に対する診断方法等の情報の周知を図ることを予定している。
https://www.forth.go.jp/keneki/naha/01infectious/rabies061116/rabies061116.htm

 咬傷受傷後にワクチン接種せず3ヶ月後に発症ですね。飲水困難、興奮と記述されていますのでその病状が察せられるところです。









































































左の動画の説明文

Description: The Greek word for rabies, "lyssa" refers to the violent nature of the disease.  The genus of viruses responsible for rabies belangs to the genus Lyssavirus in the family Rhabdoviridae.  Rabies as well as the link between human disease and animals has been known for several thousand years, but the first meaning discriptions of the disease came from Italy in the early 1500s.  In modern society rabies remains a feared disease as it was in antiquity, especially as canine rabies (street rabies) became a scourge in the 19th century.  Today canine rabies is geographically widespread and continues to represent a significant public health threat, particularly in developing countries where human deaths have been estimated to be at least 50 000 annually.  The World Organisation for Animal Health (OIE) has classified rabies as a List B disease, which means it has socio-economic and public health importance within affected countries, and is significant in the international trade of animals and animal products.  The first part of the video provides comprehensive information on the clinical signs of rabies in all domestic animal species, some wild animals and humans.  The second part of the video deals with specimen collection and transport, laboratory diagnosis, vaccination, post-exposure prohylaxis and treatment, and certain regulatory aspects relating to the control of the disease in both humans and animals.


狂犬病 rabies に対するギリシア後は lyssa だが、この病の狂乱な性質を意味する言葉である。狂犬病の責任ウイルスはラブドウイルス科のリッサウイルス属に含まれる。ヒトと動物を繋ぐものとしての狂犬病は数千年前から知られてきたが、最初の医学的に意義ある記述は1500年代初頭のイタリアのものである。近代では、古代にあったのと同様恐ろしい病で有り続け、特にイヌの狂犬病 (街路狂犬病) は19世紀に於いては災厄とされていた。今日、イヌの狂犬病は地理的に広範囲に拡大し、特に発展途上国では重要な公衆衛生上の脅威となっており年間少なくとも5万人が犠牲になっていると推定される。動物健康世界機構OIEは狂犬病をB感染症に分類しているが、これは感染国に於いて社会経済的、公衆衛生的に、また国際的な動物及び動物産品の取引に重大な影響を招くことを意味する。この動画の最初の部分では全ての家畜と幾つかの野生動物、またヒトの狂犬病の臨床症状について分かり易い情報を与え、次の部分では試料の採取と輸送、研究室での診断、ワクチン、暴露後の予防と治療、そしてヒトと動物に共通するこの疾病制御に関する定例の方法が示される。


























































































 院長のコラム 2019年4月5日   『狂犬病の話』








狂犬病の話


2019年4月5日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 4月になり、そろそろ狂犬病予防接種の始まる時節となりましたね。ここは1つ、動物の専門家、獣医師ならではの濃い話を展開しましょう。


 本邦では1950年に狂犬病予防法の成立を見、飼い犬を登録制として狂犬病ワクチン接種を義務化したこと、併せて野犬の捕獲を鋭意進めたことにより、狂犬病の一掃に成功しました。1956年を最後として、それ以降は国内感染による狂犬病は発生していません。狂犬病はイヌに固有の感染症では無く、ヒトを含めた全ての哺乳動物に感染し (スペクトルが広いと言う) 最後は重篤な脳炎を発症させる恐ろしいウイルス感染症です。発症後の治療法はなく、狂い死にするのを見ているだけになります。幸いにして日本の野生動物からも狂犬病ウイルスは検出されていません。


 但し、海外、特にアジア地区に於いては現在でも狂犬病が多発しており、毎年の死者は数万人に及びます。この様な状況を認識していない日本人が海外を訪れ、仏教やヒンズー教寺院の境内で野犬に咬まれたり、森から姿を現した小動物を撫でようとして咬まれたりする例が散見されるところです。ホテルに戻りフロント係に、さっき観光に出かけたお寺でイヌに咬まれちゃったよ、と話したところ、相手が青くなり大騒ぎになったとの事例も聞くところです。







Rabies awareness video You only live once Do not die of rabies

狂犬病啓発ビデオ 只一度の人生、狂犬病で死ぬ勿れ

Rabies in Asia Foundation

咬傷の手当、正しい治療法、ワクチン投与の実際など

分かり易く示されます。一部に末期患者の姿が入りますので

ご注意下さい。







  狂犬病からクリーン化された国は、日本、オーストラリア、グアム、ニュージーランド、フィジー、ハワイ諸島、アイスランド、アイルランド、英国(グレート・ブリテンおよび北アイルランドに限る)、スウェーデン、ノルウェーなどの数少ない国々ですが、これらの国の一部では狂犬病もどきと言って良い類似の感染症 (リッサウイルス感染症) にコウモリが感染しており、咬傷を受けて感染すると殆ど狂犬病に近い症状を発症して死亡します。本邦は先人の本症撲滅への篤い想いと努力が実りクリーン化され、現在も厳密な感染症予防管理態勢下にあります。その様な意識が波及した結果と院長は考えますが、幸い、コウモリに関しても狂犬病もどきの感染は検出されていません。


 野生動物は人間に対する警戒心が強く、自分から人前に出て来て接近する事は考えられませんが、狂犬病に感染して発症している動物個体は、一種の狂騒状態に有り、平然と接近して来ていきなり噛みつきますので、米国などで国立公園を散策中にリスが出て来た、可愛い〜、などと手を伸ばすと現地のレンジャーから、お前一体何をするんだとこっぴどく叱られてしまいます。狂犬病或いは狂犬病もどきに感染して発症しているコウモリは、山道を歩いている時などにいきなり舞い降りて肩に噛みついたりもしますので、厚めの生地の服で「武装」するのが最善です。まぁ、野生動物を甘く見ないことですね。人間に簡単に捕獲される様な個体についても、何らかの脳炎を発症しているのではと疑うことが大切です。






Rabies: Simple Steps Save Lives (English version, uncaptioned)

AmerVetMedAssn

https://youtu.be/VyPi28YRHlU

米国の獣医師が狂犬病についてその病状、感染、予防を

含め平易に解説します。米国ではコウモリからの感染が少なくないようですね。







 近年国内では野良ネコ、不要犬の殺処分をストップさせて命を救おうとの動きが活発化してきていますが、その様な国は数少なく、人間の命を奪いかねない、何の感染症に罹患しているか分からない類いのイヌやネコは殺処分して当然と考えられている国も厳然として存在します。院長が子供の頃は、野犬狩りの部隊の様な組織−おそらくは保健所の下部組織−が地域の野犬を捕獲する作戦を遂行した、との報道も耳にした記憶があります。実際のところ、小学生の時に近くの公園に遊びに行く際に、毎度襲いかかってくるイヌがうろうろしており、院長の同級生で親しかったY君 (その後慶応大に進学) は怖がってぶるぶる震えていました。自転車に乗っている時ですが、院長も道の横から突然現れ追いかけてきた野犬 (別のイヌ) に脚を咬まれそうになった事もあります。今とは隔世の感がありますが(これは東京23区内の話!)、その様なイヌ (時代からして既に狂犬病には感染していなかったはずです) が、狂犬病汚染時代には鋭意捕獲・殺処分され清浄化が成し遂げられた訳です。


 狂犬病汚染地域で万一動物に咬まれた場合 (ウイルスは唾液中に存在)、傷口を石鹸を使い良く洗いウイルスを体内から排出する操作が大切です。院長コラムの破傷風の項でも触れましたが、咬傷のキズの状態が許せば血液をしつこく絞り出す操作も有効と思います。あとは直ちに現地医療機関を受診しワクチン接種等を受ける段取りとなりますが、不明時には大使館や総領事館等に迅速に相談すると良いでしょう。自分の人生が掛かっていますので大げさに騒ぎ立てるぐらいで良いと思います。







Rabies in dogs (Extract)

イヌの狂犬病 (抜粋)

African Veterinary Information Portal (AfriVIP): Onderstepoort

Copyright: University of Pretoria, South Africa.

https://youtu.be/PTCUNn56Fpo


イヌは咬む力が強いゆえ、狂犬病を発症すると他への被害は甚大な

ものとなりますね。実際、ヒトへの感染の95%はイヌの咬傷からです。

このビデオを見れば、日本国内で狂犬病予防注射は廃止すべきだと

の見解 (院長には寝言にしか聞こえませんね) は消え去るのではと院長は

感じます。1957年までは本邦でこの感染症が存在していたとの

重い事実をけして忘れ去るべきではありません。







 感染が成立した場合、ウイルスは神経路をじわじわ遡上して脳に達します。この間1〜2ヶ月程度を要し、これが潜伏期となります。この間にワクチンの力でウイルスの遡上をストップ出来れば問題は起きませんが、ウイルスが脳に到達し軽度の脳炎症状が出始めたときはもう完全に手遅れとなり治療法はありません。破傷風は『震える舌』で映画化されましたが、人間の狂犬病はちょっと映画化は出来ないレベルの病態となります。日本が狂犬病撲滅に邁進したのも患者の悲惨な末期を見た周囲の人々の強い気持ちがあったからでしょう。


 獣医療の話に戻しますが、飼い犬は年に一度の狂犬病予防ワクチンの接種が義務付けられています。接種率が低下しているとも聞きますが、飼育しているイヌが万一第三者に噛みついた場合に未接種の場合は大ごとになりかねません。どの様な経路で海外から狂犬病ウイルスが持ち込まれるか予測がつきませんので、飼い主また周辺の人々、そしてペットの命を守る為にも予防接種は必ず受けて下さい。感染症に対して甘い態度を取ると、一瞬にして先人が築きあげた防波堤を越えられてしまい、本邦が汚染地域との認定を受ける事になりかねませんが、これは名誉な話ではありません。








Neighbor‐Joining 法によるリッサウイルスの系統樹

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/394-rabies-intro.html より転載

コウモリのリッサウイルスは狂犬病ウイルスに極く近い仲間であることが分かります。

どちらのウイルスも全ての哺乳動物に感染します。







 コウモリが狂犬病もどきのリッサウイルスに感染すると書きました (勿論狂犬病そのものにも感染します) が、純然たる狂犬病が撲滅出来たオーストラリアでは一方フルーツコウモリにこの感染が見られます。院長からすればこの感染症も狂犬病の範疇に含めて扱うべきと考えますが、噂では、狂犬病清浄国であるとの栄誉を失いたくないが為に、リッサウイルス感染症は狂犬病と異なるのだと政治的な背景で強弁していると聞いた事があります。観光客に対して狂犬病が無い国だ、安全だ、どうぞおいで下さいの旨を強調したい意図があるのではと思います。日本は現在、リッサウイルス感染症を含め清浄化されている数少ない国ですが、自然の中に出かけてもいきなり動物に噛みつかれることもない別次元の国であると、皆さんにはその幸せを噛みしめながら深呼吸して戴きたいと院長は思います。そしてそれがどのようにして達成されたのかをどうぞ時々思い返してください。


 狂犬病を含めた本邦の動物検疫体制については本項の続編、『ザギトワ選手と秋田犬マサル』にて後日触れます。