Ken's Veterinary Clinic Tokyo
相談専門 動物クリニック

                               




























本コラム作成のための参考サイト

https://ja.wikipedia.org/wiki/アポトーシス

https://ja.wikipedia.org/wiki/ミトコンドリア

https://en.wikipedia.org/wiki/Elephant






抄録原文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30110634

Copyright 2018 The Author(s). Published by Elsevier Inc. All rights reserved.

PMID: 30110634
DOI: 10.1016/j.celrep.2018.07.042
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https://ja.wikipedia.org/wiki/ゾンビ
土葬後に腐りかけた死体をブードゥー教のまじない師が復活させ、なんでも言う事を聞く奴隷として売り払うとの俗説が、現在でもハイチなどで信じられているようですね。

エボラ出血熱で亡くなった者に近親者が平然と触れ、感染拡大を招いていますが、アフリカでは死体に対する穢れや禁忌の念が或る意味薄いのかもしれません。近代医学ではなく呪術が支配する社会でしょうか。

尤も、キリスト教に於いても最後の審判の時には、高らかに鳴り響くラッパの音を合図に、土くれと化していた死者が次々と墓場から復活しますので、ちょっぴりですが似ていなくもありません。但し、綺麗な元の身体に戻り魂が宿るのでしょう。


























































































































































































































 院長のコラム 2019年7月25日 『ゾウは癌になりにくい? ゾンビ遺伝子LIFの働き@』








ゾウは癌になりにくい? ゾンビ遺伝子LIFの働き@


2019年7月25日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 昨年 2018年 の8月14日付け Cell Report に面白い論文が掲載されていましたので概略を紹介します。前にゾウは癌にならないのコラムを書きましたがそれの続編と思って下さい。

Cell Rep. 2018 Aug 14; 24(7): 1765-1776

A Zombie LIF Gene in Elephants Is Upregulated by TP53 to Induce  Apoptosis in Response to DNA Damage.

「ゾウのゾンビ遺伝子 LIF は TP53 により亢進され、DNA 損傷に反応しアポトーシスを誘導する」

Vazquez JM,  Sulak M,  Chigurupati S,  Lynch VJ .

(無料で全文を見ることができます)






https://youtu.be/wV2RI2alxh8

Zombi FunLab Cevahir'de! 2014/12/27 に公開

FunLab E?lence Dunyas?


Michael Jackson - Thriller (Official Music Video) の方に

しようかと思ったのですが、再生回数5億8千万回と

あまりに有名過ぎますのでこちらの地味なアニメにしました・・・。






Abstract

Large-bodied organisms have more cells that can potentially turn cancerous than small-bodied organisms, imposing an increased risk of developing cancer. This expectation predicts a positive correlation between body size and cancer risk; however, there is no correlation between body size and cancer risk across species ("Peto's paradox"). Here, we show that elephants and their extinct relatives (proboscideans) may have resolved Peto's paradox in part through refunctionalizing a leukemia inhibitory factor pseudogene (LIF6) with pro-apoptotic functions. LIF6 is transcriptionally upregulated by TP53 in response to DNA damage and translocates to the mitochondria where it induces apoptosis. Phylogenetic analyses of living and extinct proboscidean LIF6 genes indicates that its TP53 response element evolved coincident with the evolution of large body sizes in the proboscidean stem lineage. These results suggest that refunctionalizing of a pro-apoptotic LIF pseudogene may have been permissive (although not sufficient) for the evolution of large body sizes in proboscideans.









抄録

 大きいサイズの器官はより多くの細胞から成るゆえに小さいサイズのものよりも潜在的により癌に転じやすく、発癌のより大きなリスクを負っている。この考えはボディサイズと癌との間に正の相関が存在することを期待させるものだが、ボディサイズと癌との間に種の壁を越えて関連性は全く見られない(Peto のパラドックス)。


 ここに我々は、ゾウ並びに絶滅した長鼻目は、一部には、白血病阻止因子の偽遺伝子 (LIF6) を再機能化させ、アポトーシス促進機能を高めることで、ペトのパラドックスを解決して来た可能性を示す。LIF6 は、DNA 損傷に反応したTP53によりその転写が亢進されるが、ミトコンドリアに移動され、そこでアポトーシスを誘導するのである。


 現生並びに絶滅種の長鼻目の LIF6 遺伝子の系統発生的な解析を行ったところ、その遺伝子の、P53 遺伝子に反応するエレメントは、身体サイズが大型化に向かう長鼻目の系列が出現するのに合わせて進化した事が示された。これらの結果は、アポトーシス促進機能を持つ LIF 偽遺伝子が再機能化することで、長鼻目が身体を大型化する進化が許容された (これが全ての理由と言うわけではないが) 可能性を示す。

(院長訳)






インドゾウの交連骨格標本、熊本市動植物園資料館にて院長撮影。


肋骨を有する椎骨を解剖学的に胸椎と定義しますので、それだと

ゾウは骨盤の直前まで胸と言うことになります。胸郭 rib cage の

後ろに凸型の円蓋形(衛星放送受信用のアンテナの様な形)で横

隔膜が存在し、それから後ろに消化器の大方が収まります。最後

方の肋骨はそれら重い臓器と腹壁を支える機能を持っているのか

もしれません。尤も、ホネだけでも相当の自重がありそうです。ボ

ディサイズを地上で巨大化することは骨形態そのものに大きな改

変を伴う事が他の箇所にも見て取れます。数を増やしたのはp53

のみならず肋骨もそうだった様ですね。


マサイキリンの交連骨格標本、熊本市動植物園資料館にて院長撮影。


このキリンは首を立てた姿勢にすると頭の高さは地表から5mです。

地面に近い長いホネは実は指のホネになります。キリンもゾウと同

様に胸郭が骨盤の手前まで迫ります。体重は1.6トン程度でゾウ

の1/3程度となりますが手足は細いままです。肘と膝から上の部

分のホネが短いですが、これは前後肢を駆動する筋を胴体近くに

配置し、長いコンパスの慣性重量を減らして走り易くする工夫です。

胴体部分が小さいですね。キリンの親戚とされるオカピ(横浜ズー

ラシア動物園にて展示中)から首と四肢のみ長大化した動物に見

えます。ゾウとの骨格の違いを色々と考えてみて下さい。

手前はチャップマンシマウマ。






 院長は最初この abstract 抄録を英文で読んだときには何を言わんとしているのか正直意味不明で頭を抱えてしまいました。

 例えば、through refunctionalizing a leukemia inhibitory factor  pseudogene   (LIF6) with pro-apoptotic functions 「白血病阻止因子の偽遺伝子 (LIF6) を再機能化させ、アポトーシス促進機能を高めることで」 と英文で書かれていますが、これだと、元々 LIF6 遺伝子があったがそれが機能しなかった、それを復活させたと読めますが(上記和訳ではその通りに訳しています)、本文を読むと、実際にはLIF 遺伝子が昼行灯状態にあり、一部を作り替えた結果、LIF6 を産生できる遺伝子として復活し機能させられた、ですので頭の中で時間系列が混乱してしまいます。refunctionalize  a leukemia inhibitory  factor  pseudogene newly as LIF6 gene with 〜 と訳さないと意味が通りません。最初からそうだったのか結果としてそうなったのか、曖昧な記述が他にもあり、この論文には混乱させられました。Cell  Reports は Impact Factor (掲載された論文が何人に引用されたのかの数値、高いほど優秀な雑誌であり、投稿しても掲載されるのが難しくなる) が 8 とハイレベルの学術誌ですので中身は優秀であることに違いはありません。Lynch 以外は非英語圏の者の名前ですが、遺伝学の非専門家が読んでいて意味が通りにくい箇所があるのはそれが影響しているのかもしれませんね。まぁ、逆に言えば、中身に新奇性 novelty があり考察が優秀であれば英語に稚拙な表現が混じろうともパスする訳ですね。自分が審査に関与する時には、このスタンスを忘れない様にしたいと院長は感じました。

(次回に続く)