Ken's Veterinary Clinic Tokyo
相談専門 動物クリニック

                               

























本コラム作成の為の参考サイト:

https://en.wikipedia.org/wiki/Fox

https://en.wikipedia.org/wiki/Red_fox


https://ja.wikipedia.org/wiki/キツネ属
https://en.wikipedia.org/wiki/Vulpes


https://en.wikipedia.org/wiki/Canidae





Nature. 2005 Dec 8;438(7069):803-19Lindblad-Toh K et al.

Genome sequence, comparativeanalysis and haplotype structure ofthe domestic dog.

https://www.nature.com/articles/nature04338/

無料で全文にアクセス出来ます。




















https://en.wikipedia.org/wiki/Cape_fox

https://ja.wikipedia.org/wiki/ケープギツネ



ケープギツネの生息域




https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cape_Fox_area.png
English: Cape Fox range
Source Own work
Author Chermundy
改変無し、ライセンス情報は上記url に記載








































































































https://en.wikipedia.org/wiki/Corsac_fox

https://ja.wikipedia.org/wiki/コサックギツネ



コサックギツネの生息域




https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Corsac_area.png
English: Corsac range
Source Own work
Author Chermundy
改変無し、ライセンス情報は上記url に記載


https://en.wiktionary.org/wiki/corsac

https://ru.wikipedia.org/wiki/Казаки

https://ja.wikipedia.org/wiki/カザフ




























































https://en.wikipedia.org/wiki/Tibetan_sand_fox
https://ja.wikipedia.org/wiki/チベットスナギツネ

チベットスナギツネの生息域




https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tibetan_Fox_area.png
English: Tibetan Fox range
Source Own work
Author Chermundy
改変無し、ライセンス情報は上記url に記載























































院長のコラム 2019年9月25日 『キツネの話F 本家のキツネ 喜望峰とコサック』








キツネの話F 本家のキツネ 喜望峰とコサック


2019年9月25日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 キツネ属全12種の内の、系統の細かな枝毎に代表的な種を採り上げ、Wikipedia の記事を主に参考として説明していますが、今回は Cape fox ケープギツネと Corsac fox コサックギツネを採り上げます。






Modified after Fig.10 in Nature. 2005 Dec 8;438(7069):803-19 Lindblad-Toh K et al.

Genome sequence, comparative analysis and haplotype structure of the domestic dog.

https://www.nature.com/articles/nature04338/figures/10


2005年 Nature 掲載論文の図10のキツネの系統の部分のみを

切り取り加工しています。





ケープギツネ Vulpes chama Cape fox


 英語のcape には肩掛けで羽織る短いマントの意味と岬の意味の2つがありますが、本種ケープギツネはアフリカ南端の喜望峰 Cape of Good Hope に因みます。生息域が南アフリカ共和国の喜望峰を取り巻くケープ州を中心とするのでその地名から名付けられた訳です。系統的にはアカギツネやホッキョクギツネの一団からは幾らか離れるものの、フェネックギツネほどには離れていないとの、立ち位置ですね。しかし外見的には、その大きな耳、華奢な体つきなどからフェネックギツネやブランフォードギツネにより近い様に見えます。

 体重は3.6 - 5kg 程度でほっそりした体型です。他のキツネの仲間同様に雑食性で、爬虫類を含めた小動物、昆虫、卵、植物を食べます。その大きな耳は地面の下に潜っている昆虫が発する音をキャッチするのに役立ちそうです。植物がまばらに生える平地から半砂漠に掛けて棲息します。

 夜行性ですが、夜明け前か日没後の薄暗がりの時に最も活動的になります。日中は地下の穴に隠れていますか、他の動物が捨てた巣穴を利用するのみならず自身でも巧みに巣穴を掘り進めます。興奮すると尻尾を突き立て、その程度で興奮の度合いが分かります。

 イヌ科動物に一般的に見られる様に、ケープギツネも終生同じ番いで過ごします。アカギツネとは異なり周年繁殖性です。寿命は6年程度と期待されますが、10年生きる例もあります。鷹やフクロウ、カラカル、ヒョウ、ハイエナ、ライオンなどに捕食され、また狂犬病やジステンパーに遣られてしまったり近年では交通事故で死ぬ個体も増えています。他の動物捕獲用の罠に捕まったり、害獣として狩猟されたり迫害をうけたりもします。一年当たり2500頭が殺されますが、これは全個体数の16%に相当します。にも関わらず危惧種とは全く認識されていません。

 年間死亡数が多いですが、せっせと繁殖して個体数がギリギリ維持されているとの判断なのでしょうか。絶滅への道を歩まないことを祈らずにはおれません。






ケープギツネ

http://www.krugerpark.co.za/africa_cape_fox.html

南アフリカ共和国北東部に位置するクルーガー国立公園にてサファリ

観光事業を営む企業のサイトの様です。公園内に棲息するイヌ型動物、

オオミミギツネ、アードウルフ(これはイヌ型ハイエナ)、セグロジャッカル、

そしてケープギツネ全ての耳が大きいのですがどうしてなのでしょうか?

理由を考えてみてください。サファリ観光で過ごしたら楽しそうです。




https://youtu.be/IJgABc-P15k

The cape fox in the Okavango Roel Diepstraten 2019/04/25 に公開


ケープギツネの子供が昨晩親ギツネが捕獲したであろうウサギの肉

を食べています。カラハリ砂漠内のオアシス、オカバンゴにて。系統的

に1つ前に分岐したフェネックギツネに似ているところを感じます。アカ

ギツネよりはフェネック寄りに感じますが皆さんはいかがでしょうか?

まぁ、可愛い系の顔つきなのは間違いなさそうです。





コサックギツネ  Vulpes corsac Corsac fox


 コサックと聞くと、バラライカの演奏に合わせて足を屈した苦しそうな姿勢で踊る兵士の姿を思い浮かべる方も多いことでしょう。 ところがこちらはトルコ語の Karsak (イスタンブールの南にこの地名の場所があります) にまで辿れるロシア語корсак (korsak コルサーク) での命名に由来します。逃れた農奴や没落貴族が結成した半自治的な軍事組織であったコサック (ロシア語 Казаки カザーク)とは綴りも発音も違います。特に  r の発音が有りません。こちらはカザフスタンの国名のカザフと同源で、トルコ語系言語の漂流者、遊牧民を意味する言葉から来ている様です。まぁ、Corsac の発音はコルサックですので和名もコルサックギツネに改めるべきでしょう。このままだとロシアのコサックそのものに関連するのかと誤解されてしまいますので。

 動物のコラムを書いていて常々感じる事ですが、なぜそのような和名にしたのか疑義を抱く例が多々あります。これは、動物学に従事する者が極く少数に限定され、閉ざされた世界で競争原理が作動しないことがその理由の1つではと想像するところです。余談ですが、本邦が、動物学に広く関心を抱くことが極く普通の趣味・教養であるような世の中となり、研究を志す若者達或いはハイアマチュアがワンサカ湧いて呉れればと思っています。世の中には沢山の趣味や娯楽がありますが、フィールドに出て野生動物を観察するのも最高です。但し、クマやイノシシに襲われたりダニに咬まれたり寄生虫などに感染することのなきよう・・・。自然界は甘くはありません。

 本種はモンゴルから中国東北部に至るまでの中央アジアに掛けて、草原、半砂漠、砂漠に分布します。体重は、 1.6 〜 3.2kg 程度と小型で、キツネの仲間にしては小さな歯と幅の広い頭蓋骨を持ちます。刺激臭のある匂いを出す腺を肛門周り、手のひらの近く、頬に持ちます。狩猟時やライバルを威嚇する時に吠え立てたり、仲間とコミニュケーションを取る際に甲高い声で啼いたりもします。乾燥した環境への適応として、水は飲まず、食物中から得る事が出来ます。昆虫や小動物をメインとしますが、特に獲物が捕れないときには果実や野菜などの植物も摂ります。オオカミや猛禽類に捕食されます。他のキツネと異なり、時に群れで狩りをする事もあります。深い雪の中で狩りをする能力を持たず、厳冬期には巣穴に隠れていたり、南方に600kmも移動する事があります。登攀能力に優れる一方、走るのは遅く、飼いイヌに容易に捕まります。野生下では9歳まで生きます。チベットスナギツネが最も近縁な仲間だろうと考えられています。逃げ足が遅く、すぐに狩猟者の手に落ちてしまい、毛皮目当ての密猟や自然災害で数を減らしますが、迅速な回復力を見せて危惧種にはなっていません。

 逃げ足が遅かったり寒さに弱かったりで、ちょっと鈍くさくも感じますが、地中の巣穴に隠れて敵を遣り過ごしたりとの神出鬼没?の頭脳プレーで生き延びているようですね。その点はキツネらしくもありましょう。

 キツネシリーズのコラムの最後の方で扱いますが、コサックギツネ並びにチベットスナギツネの生息域が寄生虫のエキノコックス症の重篤な流行地となっています。この2種のキツネもおそらくほぼ全個体が陽性であると推測され、現地の土壌や水環境は虫卵で汚染されていると考えるべきです。野生動物を調査する際にはこの様な背景知識も必要となるとの話です。






コサックギツネ

執刀時の外科医みたいな怜悧な目つきでカッコいいですね。イヌや

オオカミを思い浮かべませんか?



https://youtu.be/niOYTdD2aao

A Tibetan Fox and a Brown Bear hunting Pikas in the Himalayas

Fox Repellent Expert 2014/01/03 に公開

Great footage of an opportunistic Tibetan Fox letting a bear do all the

hard work of getting Pikas out of the frozen ground and grabbing one for

itself. Also a great example of the fox stashing its food for a later date,

a trait common to all foxes.


熊に凍った地面を掘らせ、そこから自分でナキウサギをちゃっかり

捕獲する楽天家のチベットスナギツネ。コサックギツネに最も近縁な

現生種とされます。顔つき、特に目つきが独特ですね。このキツネも

体重4〜5kgとサイズは小さめです。しかしナキウサギが随分と

棲息しているようですね。






  2005年の Nature 掲載の学説では、キツネ族がイヌ科の祖先から分岐して後、オオミミギツネ>タヌキ>フェネック>ケーブギツネ>(ホッキョクギツネ+コサックギツネ+アカギツネ)へと次々に枝を出しながら分かれて行きましたが、ケーブギツネまではアカギツネなどとは異なり、華奢な体つきだったり耳が長かったり、ずんぐりしたりと、その先のアカギツネなどとは趣がだいぶ違う様に見えます(但し、アカギツネに最も近縁とされるRuppell's fox オジロスナギツネ-次回コラムで説明します-はほっそりして耳長でケープギツネ風です)。それがコサックギツネになるとちょっと変な表現になりますが、いかにもキツネ然としたオーラが出ている様に感じます。学問的に言えば、平地疾走性の卓越した狩人とはならないまでも、おそらくは平地移動性の強化とそれに伴う採食性の変化などゆえに、イヌ型的要素を幾らか強め始めているのかなとの考えが院長の頭を掠めました。まぁ、ジャコウネコ風の祖先がイヌ型化してハイエナに進化した様なプロセスです。いや、齧歯類を捕獲することでネコに行動や形態が似てきている、との説もあるのですが、キツネの形態はネコには似つきもしませんし、小動物を捕獲するときの狩猟スタイルもネコとは明瞭に異なっているので、その説はアマチュアの思いつきレベルの完全な間違いでしょう。寧ろ、イヌ型への収斂現象がキツネ属の末裔の幾つかにもある程度起き始めているとの考えです。われわれが普段思い浮かべるキツネとは、他のイヌ科動物とは一旦別の世界に分かれ出たものが、イヌ型に進み始めたキツネなのかもしれません。この考え方については次回で少し掘り下げて考察します。