Ken's Veterinary Clinic Tokyo
相談専門 動物クリニック

                               

























本コラム作成の為の参考サイト:


https://en.wikipedia.org/wiki/Hip_dysplasia_(canine)

https://flexpet.com/hip-dysplasia-in-dogs/


https://www.fitzpatrickreferrals.co.uk/orthopaedic/total-hip-replacement/

https://animalmedcenter.com/total-hip-replacement/




























































































































































































































































































 院長のコラム 2019年12月25日 『イヌの股関節形成不全H 外科手術V』








イヌの股関節形成不全H 外科手術V


2019年12月25日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 英語版のWikipedia のイヌの股関節形成不全の項

https://en.wikipedia.org/wiki/Hip_dysplasia_(canine)

が文献の引用も豊富で比較的に充実していますので、他文献やweb サイトからの最新情報も補いながら、これを話の軸として話を進めたいと思います。


 引き続き観血的治療、即ち身体にメスを入れる外科手術に拠る治療法についてお話しします。






Fern's journey - an agility dog's recovery from hip replacement

Jackie Bromwich 2013/02/10 に公開

Fern is an agility dog who had a total  hip replacement performed by

vet Noel Fitzpatrick at Fitzpatrick Referrals in Surrey - this shows

the phenomenal recovery she has made in the year following surgery.

https://youtu.be/Wq_JNHb6dgc


英国の有名な Fitzpatrick Referrals にて股関節全置換術THR を受け、

その翌年の姿です。全く問題なく運動し得ていて言う事無し、です。






股関節全置換術  total hip replacement THR



 股関節全置換術  total hip replacement  THR  は、欠陥を持つ関節を滑らかな動きを可能にする人工関節に完全に入れ替えますので、特に重症例に於いては最大級の治療効果を持ちます。もし身体の他の関節が障害を受けていなければ、この治療を通じて完全な股関節の可動性が復元され、再発も全くありません。イヌの股関節置換術は、体重がおよそ18〜27kg以上の個体、即ち他の外科的治療が躊躇される重量サイズに達している重度の股関節形成不全例に対しては、臨床的な選択枝としてより好まれます。それに、患畜のサイズが大きいと、骨の細部加工が手技的にも実際楽になります。患畜に適合するサイズのチタン製のソケット&ボールを選択し、ボールの方は骨頭を除去した大腿骨にアンカー部分を押し込み、一方、ソケットの方は、骨盤側にやや深めの穴をくりぬいてはめ込む形となります。寛骨臼側のホネの厚みが薄い、或いは骨質が粗い(骨密度が低下の)場合は、ソケットを取り付けても上手く固定できませんので、X線像でサイズ等含め事前に注意します。

 これぞ股関節形成不全の最終兵器、王道との位置づけにも感じられるかと思いますが、手技的にはそこそこの難易度が有り、また実際に費用も安くはありません(米国相場で片側4000〜5000ドル相当)。







Total Hip Replacement 

VCA West Los Angeles Animal Hospital 2015/07/24 に公開

Total Hip Replacement (THR) is a highly successful procedure that is

used in patients with coxofemoral joint disease as a means of restoring

normal joint function and to eliminate pain. THR is  used in patients

ranging from 5 months to 16 years of age. The procedure can be performed

in animals ranging from 5 to 180 lbs. and has been performed in 99 breeds

to date. THR materials are available in sixteen sizes to insure a custom

fit for each dog or cat. The most common indication for THR is hip

dysplasia with secondary arthritis. However, other indications include

hip luxation, capital physeal fractures, femoral neck fractures, mal-union

of acetabular fractures, femoral fractures with secondary arthritis, pain

following previously performed femoral head and neck ostectomy, and rarely

neoplasia. Dogs that receive THR can lead a normal life. The few exceptions

include avoiding very strenuous exercise such as catching Frisbees, fly ball  

competition, racing, exhausting hunts in rugged terrain, and pulling heavy loads.

https://youtu.be/HsD1tb-NDCw


THR は5ヶ月齢から16歳に至る患畜に施術され、これまで99の犬種にて

行われています。人工関節素材は16種のサイズが入手可能で、最も普通の

適応症は二次性関節炎を伴う股関節形成不全となります。それ以外にも、股

関節脱臼、骨頭骨端軟骨骨折、大腿骨頸骨折、関節臼骨折の変形癒合、二

次性関節炎を伴う大腿骨骨折、以前に受けた骨頭切除術からの痛み、稀に

は新生物なども適応症となります。THR を受けたイヌは通常の生活を送れま

すが、フリスビーをキャッチする、投げたボールを取らせる、競争、凸凹の地表

での消耗する狩猟、重い物の牽引と言った非常に負荷の掛かる運動は避ける

必要があります。


セメントを利用して人工関節を貼り付ける技法ですが、これだと<持ち>が

悪く、現在では多孔質の表面コーティングの物が利用もされ、細かな穴に

骨が芽を伸ばして生着し、終生問題なく利用可能です。




Total Hip Replacement (THR) in dogs with KYON implants.

veterinarysurgery.gr 2016/05/29 に公開

Hip dysplasia is a common orthopaedic disease in dogs. In cases

of painful severe osteoarthrosis, THR can be curative for the

majority of them. Although THR is a demanding procedure, expert

surgeons can have a success rate up to 95%.

https://youtu.be/-3wmUe1zwmk

手術シーンがあります。ご注意下さい。


獣医師から見ると大変分かり易い内容で勉強になりますが、

一般の方には手術シーンが厳しいかもしれません。

熟練獣医師では成功率が95%に達します。






 オペの実際ですが、皮膚と皮下組織を切開後、股関節の上を覆っている筋膜や筋腱などを切開し、更に関節包を切り開いて大腿骨頭を露出させます。骨頭を頸部で切断後、アンカー部を差し込む為の穴をドリルで開けますが、大型犬ともなると骨質が硬く、スンナリと穴を通せる訳ではありません。関節臼の中心部に小さな穴を開け、ここに半球状のヤスリの先端を差し込み、左右に揺らしながら回転し、雌型のチタン製部品を取り付ける穴を造ります。次に大腿骨幹にアンカーを押し込み、更にサイドからボルトを貫通し、アンカーが長軸回りに回転する事無きよう、また長手方向に動かぬよう固定します。雌型の方も押し込み、そこに人工骨頭をはめ込めばほぼ終了で、可動域の問題なきことを確認したあとで切開創を閉じれば終わりとなります。

 X線像から事前に適合するサイズのチタン製関節を選択すると同時に、それに合わせて加工を行う術具を準備するなどの事前のシミュレーションが大切です。手慣れた術者にとっては3D的な解剖の位置関係など全て頭に入ってのオペでしょう。オペ用の専用の術具或いは保定具を一通り備えるのも安くは無く、院長は米国相場の費用で妥当と感じたところです。個人開業の動物クリニックでは施術は困難ですので、外科専門病院や大学病院等に於けるチームワーク下での施術となります。








 これまで全9回に亘り、イヌの股関節形成不全について解説を加えましたが、本疾患の遺伝的背景が指摘されている犬種を飼育中の方々、或いはこの先に飼育しようとご予定の方々の参考になれば幸いです。本疾患に関して個別のご相談或いはセカンドオピニオン等をお考えの方は、どうぞ本クリニックの相談を一度お受け下さい。イヌの他の遺伝性疾患に関しては、犬種との対応を踏まえ、後日別項にて詳しく述べたいと考えています。

 次回2020年の年明けからはイヌの運動器に於ける別の重要な疾患である、前十字靭帯断裂についてお話を進めます。どうぞご期待下さい!