Ken's Veterinary Clinic Tokyo
相談専門 動物クリニック

                               

























本コラム作成の為の参考サイト:

https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ


https://en.wikipedia.org/wiki/Dipodidae







キヌゲネズミ科


https://ja.wikipedia.org/wiki/ハタネズミ属

https://en.wikipedia.org/wiki/Microtus


https://ja.wikipedia.org/wiki/エゾヤチネズミ

https://ja.wikipedia.org/wiki/タイリクヤチネズミ

https://en.wikipedia.org/wiki/Grey_red-backed_vole


https://ja.wikipedia.org/wiki/スミスネズミ

https://en.wikipedia.org/wiki/Smith%27s_vole

https://en.wikipedia.org/wiki/Bank_vole

https://en.wikipedia.org/wiki/Western_red-backed_vole

https://en.wikipedia.org/wiki/Zaisan_mole_vole


https://en.wikipedia.org/wiki/Common_vole








https://en.wikipedia.org/wiki/Paphiopedilum_rothschildianum









































































































































































































































































 院長のコラム 2020年4月25日 ネズミの話I日本の野生ネズミY キヌゲネズミ科A








 ネズミの話I 日本の野生ネズミY キヌゲネズミ科A



2020年4月25日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

日本の野生ネズミのお話の第6回目です。






https://www.researchgate.net/profile/Gabor_Paller/publication/298070276/figure/fig1/AS:339306272051234@1457908327943/Common-vole-Microtus-arvalis-source-National-Forestry-Association-Hungary.png


ナミハタネズミ  Common vole  Microtus arvalis


日本のハタネズミ 畑鼠、とは極く近縁です。ヨーロッパに分布します。






ハタネズミ  Japanese grass vole  Microtus montebelli

 英語版の wikipedia ではハタネズミはキヌゲネズミ科ハタネズミ属  Microtus に分類されていますが、一方日本の wikipedia ではハタネズミ属  Microtus はネズミ科に分類されています。本項では英語版に倣いキヌゲネズミ科として扱います。Microtus とは耳が小さいの意味ですので、そのずんぐりした体型からも vole 即ちズングリネズミ であることには間違いはありません。ハタネズミの仲間はヨーロッパからユーラシア大陸に掛けて、深い森を除くあらゆる草地、河川敷や畑地、低地の草原に生息しています。人間の文明の拡大と共に生息域を広げ、人家近くでは緩い傾斜地を好み棲息します。それが各地で固有種 (と言っても違いは僅少) に分化を遂げたのでしょう。草食性ですが、栽培された穀物も食べます。

 本邦のものは、大きさは頭胴長約 90〜130 mm 、尾長約 30〜50 mm 、体重約 40〜50 g ほどです。背面の毛色は茶色または灰黄赤色で、腹部は灰白色です。

 草の間の地面の上を線路の様な通り道を作って移動し、このルート以外には滅多に外れません。登攀能力には乏しい動物です。体型を丸っこくすれば四肢に掛かる抗重力方向の力の負担が増し、登攀には不利になりますが、一方、腹面や浮力で体重を支えながら四肢で水平方向に移動する動作に問題は起きず、身体に余計な出っ張りのない体型は、体温保持の利点以外に前進への抵抗を減らす利点も有ります。ハタネズミは地中 30〜40 c mの深さに巣穴を掘り、ここに食物を貯えます。雌はテリトリーを持ちますが、雄は複数の雌との間に繁殖を行うべくテリトリーを持たず、流れ者の様に移動します。こんな訳で雄の行動範囲が 1200〜1500 平米であるのに対し、雌は 300〜400 平米に留まります。個体密度が増えればこれらは共に狭くなります。

 雌は生後 13日 で妊娠可能となり、16〜24日 後に 3乃至 8頭 を出産しますので、最短で生後 33日 で子供を産むことになります。3月から10月ころまで、通常 3回出産します。平均寿命は僅か 4〜5ヶ月 ですので 10月に生まれた子供が冬を越えて生き残り、他は死に絶え、春になって出産を開始します。出生時には性比は雌雄 1対1 ですが成熟するに連れて雄が減り、雌対雄が 3対 1〜4対 1 程までになります。生息密度は 3年から5年周期で変動し、1ヘクタール当たり 100個体から 2000個体にまで増減します。大発生時には繁殖率が自ずと低下することの他、餌の質や量、光の問題、或いは捕食されることなどを通じて個体数が減少します。1ヘクタールは 10000平米で 100m四方の正方形の面積ですが (ヘクトとは10の2乗の意味、1ヘクタールで1アールの100倍)、それに 2000頭が棲息するとすれば、1アール 10m四方当たり 20頭の計算となり、確かに多過ぎなぐらいの密度ですね。肉食獣や猛禽類、爬虫類の栄養の元であるのは間違いなさそうです。






https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b9/Myodes_rufocanus.jpeg

Zbyszek Boratynski / CC BY (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0)


タイリクヤチネズミ






エゾヤチネズミ Japanese grey red-backed vole

Myodes rufocanus bedfordiae


 本種はタイリクヤチネズミ grey red-backed voleMyodes rufocanus の1亜種で、種としては北海道からシベリア、スカンジナビアを含む北ヨーロッパに掛けて東西に延びるベルト地帯に棲息しています。北海道に閉じ込められて種分化しつつある初期にあると考えて良いでしょう。頭胴長は11〜14cm,。尾長は 2.5〜4.5 cm程度、体重は約27〜50 g です。他のヤチネズミに比べて毛色の赤みが強くまた大型です。カンバ林や針葉樹林の、川辺で下草が生い茂る場所、岩石地帯に棲息しますが、森の中の開けた野原、荒れ地、乾いた沼地などにも棲息します。基本的に草食で、ビルベリー (ブルーベリーの小粒のもの)を好みます。ツンドラ地帯では 4,5年周期で爆発的に増えますが、この現象は北海道では観察されない様です。レミングも発生頻度はタイリクヤチネズミよりは落ちますが、同じ年に更に爆発的規模で増大します。これはタイリクヤチネズミが冬には繁殖しないのに対し、レミングが冬の間も繁殖することが理由の1つと考えられています。北海道ではキタキツネとエゾヤチネズミとの間で寄生虫エキノコックスの生物環が既に成立していますが、その環の中にヒトが入り込むと、いつまでも成熟し得ない幼虫が人体内で増殖し続け重大な症状を引き起こします。エキノコックスに関しては、2020年10月20日、25日付けの院長コラムにて詳述していますので是非ご覧ください。






ドテヤチネズミ Bank VoleMyodes glareolus

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/60/Bank_Vole_Myodes_glareolus_Grand_Union_Canal_1.jpg

AnemoneProjectors (talk) (Flickr) / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0)


スミスネズミの良質の写真が見付からず、参考の為近縁のドテヤチ

ネズミを示します。外見的にはスミスネズミと殆ど見分けが付きません。

小さな耳、丸っこい体型、尖っていない顔付き、頭胴長の半分程度

の長さの尻尾に注目ください。主にヨーロッパに棲息します。






スミスネズミ  Smith's vole  Myodes smithii


 スミスネズミは日本固有種で、生息域は東北地方南部までの本州、四国、九州に分布しています。低地から高山帯までの森林や山間の畑などに生息し湿潤な所を好みます。頭胴長は約7.5〜11.5 cm、尾長は約3〜5.5 cm、体重は20〜35 g 程度です。植物の根や茎や種などを餌にしています。石灰質の多い土壌を好むため、この条件に適した四国で大発生することがあります。


 種小名は 1904 年にタイプ標本(種名を付けた根拠となる実物標本)を六甲山で採集したゴードン・スミス氏に由来します。博物学的な発見、詰まりは新種を発見して自分の功績を学名として残そうとの機運は、特に英国人には根強い様に院長は覚えますが、スミス氏もその一人でした。現在でもプロとしてのアニマルハンター、プラントハンターが存在し、例えば大富豪に探検のスポンサーとなって貰い、新種が得られた暁にはその大富豪の名を種小名として名付けるなどは特に珍しくもなく見られることです。院長も以前育てていましたが、アツモリソウなどのランに近い仲間の原種Paphiopedilum rothschildianum パフィオペディルム ロスチャイルディアーヌムなど説明するまでもないでしょう。


 本種に関しては系統上の位置づけに数多くの議論が展開されてきています。一生を通じ臼歯(後臼歯しか存在しません)が成長を続け、この特徴から一度は Phaulomys 属として分類されたことも有ったのですが、ミトコンドリア並びに核リボソームDNAの研究の結果、日本のタイリクヤチネズミ Myodes rufocanus及びセョウセンセアカヤチネズミ Myodes regulusに系統的に近いことが示され Phaulomy 属に分類することは全く支持されなくなりました。スミスネズミの成長し続ける臼歯については、現在では、日本固有のMyodes 属の祖先に発する独立的な特徴だろうと信じられています。しかし前歯も一生伸び続け後臼歯も伸び続けるとは或る意味大変そうですね。残念ながら院長は現物を観察した経験は有りません。ゾウの牙(実は前歯、切歯)も伸び続けますが、伸び続ける、一定のサイズの歯牙に留まる、の違いはどのような機構に基づくのか、遺伝子の作用含めてご存知の方が居られましたら院長まで是非ご一報下さい。








 今回で本邦に棲息する野生ネズミのお話は終わり、次回からは人間と関わりの深い!ネズミのお話に入ります。