Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               




















































































院長のコラム 2019年2月14日

『イヌの躾の話』







イヌの躾の話




2019年2月14日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 今年の年明け 1月 12〜14日 にパシフィコ横浜にてペット博 2019 http://www.pethaku.com/yokohama/ が開催されました。主催者は PET 博運営事務局と言う大阪に拠点を構える団体ですが、一種のイベント屋さんかもしれませんね。院長は今回は都合が悪く行けなかったのですが、ホームページのイベント内容を確認すると、数年前に覗いた時と基本的なメニューは同じ様に見えます。場所を変えて開催されますので、一度出掛けられては如何かと思います。

 この種の催し物には時間が取れればですが、院長も関係者として「偵察」と称して遊びに行く (横浜会場の場合は中華街に立ち寄り美味いものを食べたりと・・・)のですが、以前の経験では中身はなかなか充実していて、特にイヌの躾教室は大変価値があるものと感じました。散歩時の人間との歩き方、手綱の使い方の訓練など幾つかををサークルの外から眺めていたのですが、斯界の第一人者が講師を務められ、理論に立つ、優れた、また充実した内容の躾教室であり、これは非常に勉強になると思わず見入ってしまいました。

 この様な、実地訓練の場を直接見学せずとも、youtube にて<イヌ 躾け>で検索すると数多くの動画が得られます。専門家が関与したものを見ればだいぶ参考になるでしょう。

 イヌの躾や動物の調教の実際に関しては、大学の獣医学科で動物行動学を勉強した程度では歯が立たない様にも思います。その道の一流の専門家に相談するのが最善と考えます。







「噛む、吠える」犬の問題行動のしつけ方 https://youtu.be/WvDUkOhDoQ4





カリスマドックトレーナー 凶暴の犬しつけ その1 https://youtu.be/Gn3d36X89JA


咬まれないよう口輪を装着しているシーンが有りますが、武器となる口を制御するとだいぶ攻撃

性が低下します。ここでは公開できませんが、獣医師ならではの咄嗟の方法もあります。


その2,その3もご覧下さい。






 イヌはオオカミを祖先とする動物ですが、人間に対して親和性を強く持つ生き物である(学名Canis familiaris は人に慣れ親しむイヌ属の動物の意)と同時に、矢張り祖先であるオオカミの習性を残しています。実は、イヌは生物種としてはオオカミと同一種と考えて良く、そのため、学名をオオカミの亜種 (同じ種同士だが少し違っている種類)として記述する方法もあります。この場合、オオカミの学名Canis lupus に対し、イヌの学名をCanis lupus familiaris と記述します。ヒトに親和性のあるオオカミ、と言う意味になります。因みに種を表す学名(属名+種小名)は慣用的にイタリック体で表記します。

 オオカミは集団に拠る追い詰め型にて大型動物の狩りをする訳ですが、「一匹オオカミ」が単に烏合して対象に襲い掛かるのではなく、そこには牽制を含めた互いの統制が存在します。どう言うことかと言うと、組織としての統制が必要とするゆえの、縦の強い序列ですね。つまりは人間界の中に於いては、接する人間を上下で見ている動物と言う訳です。この様な習性を一種の社会性と考える研究者もいます。これを逆に考えれば、社会的な序列の中で生き、各々の立場を理解する動物であるからこそ、ヒトとの密接な生活が基本的に可能な生き物である、と言う話になります。

 この習性を鑑みて、人間がイヌを飼育する場合、特に力の強い大型犬に関しては、飼い主が絶対的なボスであるとの躾をすることが大切と考えます。序列の関係が曖昧になると咬傷事故発生等に繋がりかねません。武器である強大な犬歯  (Canine tooth) を持つ生き物であることを忘れてはなりません。 注意すべきは、イヌを飼育することは何もイヌを完全に人間と対等に扱う事ではありません。人間には人間の基本特性があり、イヌにはイヌとしての基本特性があり、等しい存在ではありません。これを誤解して自分の思い込みでイヌを飼育すると不幸な咬傷事故にも繋がります。

 英国ではイヌを飼育して初めて家族が完成すると言われますが、イヌを人間社会に迎えるには、イヌにはイヌにふさわしい躾けを行い、イヌと人間が共に幸福になれる様に訓練するのは当然のこととされます。厳しいことを言いますが、飼いイヌが他人様に咬傷事故を起こすようなら大変恥ずべきことと自覚してください。刑事上の過失責任を問われる他、多額の民事補償を請求されるおそれもあります。

 獣医師の院長の立場としては、街中で躾の出来ていないイヌとその飼い主を目にすると、やはり厳しい視線を思わず送ってしまいますね。動物の飼い方1つで、飼い主が普段から、人と動物の関係性について、何をどの程度考えているのかが歴然とします。詰まりは飼いイヌの姿を見れば飼い主のレベルが見えてしまう訳です。適切な躾けを行い、イヌとの素晴らしい生活を送って戴ければと院長は願います。








 愛玩用の小さめのわんちゃんでも躾が出来ていないと悪戯をしたり噛みついたり唸ったりもします。こうなってしまうと良い関係が築けず、イヌにとっても飼い主側の人間にとっても不幸な状態となってしまいます。欧米の様にイヌを躾の学校に預ける方法もありますが、それはちょっと大仰だと思う方もまだ多いでしょう。どうも自宅のわんちゃんが締まりがない、なんとかしたいとお悩みの方は、一度、ペット博等のこの手のイベントに顔を出し、躾訓練の実際を目の当たりにするのも刺激になると思います。わんちゃんを<猫かわいがり>してはいけません、を話のオチとしましょう。。

 どうしてイヌが人間に親和性を持つに至ったのかについては最近面白い学説が提示されましたので、それを踏まえてまた後日書きたいと思います。