Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               



























































































院長のコラム 2019年2月18日


『愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律』







愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律




2019年2月18日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です

 今回は法律面での話題です。

 愛玩動物とは、要はヒトの傍に存在するだけでその価値を持つ動物、ペットを指しますが、この法律が定める動物種はイヌとネコが該当します。巷で飼育されているペットには、獣医師免許不要で診療を業としても罰則の無い、多数の動物種が含まれます。本法律は、この法律は、動物愛護の精神を元に成立を見た、安全な飼料を与えましょう、との法律ゆえに、飼料製造業者に対して、これらイヌ、ネコ以外の飼料に対しても等しく製造上の責任を求める趣旨であると解釈可能と考えます。今回はこの法律について考察して行きましょう。



以下参考サイト:

 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)には以下の条文が含まれます:以下条文は eGOV  (電子政府の総合窓口)から自由に閲覧出来ます。


 まずは、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律の概要、にお目通し下さい。

https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/petfood/index.html


 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=420AC0000000083


第一条 この法律は、愛がん動物用飼料の製造等に関する規制を行うことにより、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与することを目的とする。

第二条 この法律において「愛がん動物」とは、愛がんすることを目的として飼養される動物であって政令で定めるものをいう。


(中略)


第七条 農林水産大臣及び環境大臣は、次に掲げる愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため必要があると認めるときは、農業資材審議会及び中央環境審議会の意見を聴いて、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の製造、輸入又は販売を禁止することができる。


第八条 製造業者、輸入業者又は販売業者が次に掲げる愛がん動物用飼料を販売した場合又は販売の用に供するために保管している場合において、当該愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止するため特に必要があると認めるときは、必要な限度において、農林水産大臣及び環境大臣は、当該製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、当該愛がん動物用飼料の廃棄又は回収を図ることその他必要な措置をとるべきことを命ずることができる。 (第7条と8条は抜粋)




Wikipedia からの引用:

アメリカ食品医薬品局. (2018, February 22). InWikipedia. Retrieved 09:11, February 22,2018, from https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=アメリカ食品医薬品局


アメリカ食品医薬品局 Food and Drug Administration

 「アメリカ食品医薬品局(アメリカしょくひんいやくひんきょく、Food and Drug Administration; FDA)は、アメリカ合衆国保健福祉省(Department ofHealth and Human Services, HHS)配下の政府機関。連邦食品・医薬品・化粧品法を根拠とし、医療品規制、食の安全を責務とする。


 FDAは食品や医薬品、さらに化粧品、医療機器、動物薬、たばこ、玩具など、消費者が通常の生活を行うに当たって接する機会のある製品について、その許可や違反品の取締りなどの行政を専門的に行う。


 食品については、所轄行政官庁が厚生労働省以外にも複数の官庁(農林水産省、経済産業省など)に渡る日本と異なり、FDAで一元的に管理しているとされる。しかし、食肉や鶏卵の衛生管理は農務省が所管しているなど、日本では厚生労働省が行っている業務の一部は他の官庁が実施している。日本の食品行政について、マスメディアで識者が指摘することの多い、日本の複数官庁にまたがる縦割り行政の問題を論ずる際の一つの比較例として、このFDAが良く引き合いに出されるが、この指摘は必ずしも正しくない。 」








FDA and Pet Food U.S. Food and Drug Administration https://youtu.be/IQ293BzxNvg

「ペットフードはその中身や重量などについて正確にラベルされていなければなりません。

問題があった場合、FDA に情報をお寄せ下さい。」


<FDA pet food>のキーワードで youtube 動画が数多く検索できます。FDA が積極時に

ペットフードの安全性に乗り出している姿勢が見て取れますが、飼育者の皆様も受け身の態度

では無く、海外の状況を積極的に知って欲しく思います。






 日本の場合、なぜか環境省がペットフードの法律を所管していますが、米国では人間用もペット用も食べ物は同じ役所の管轄となっています。日本の様にイヌ、ネコに限定されず、魚や馬の飼料に至るまで含む様ですね。食べ物に関する調査、分析手法は基本的に同じですので、国内でもノウハウを持つ厚生省が管轄すべきと院長は感じますが、おそらく、ペットフードの実際の分析等は農水省管轄下の検査機関が執り行うのでしょう。

 農産物に関しては、人畜共通感染症や畜産施設・環境を総合的に踏まえた対策を行う必要性から、米国で農務省が食肉や鶏卵等の管理を行うことに対して、院長は全く異論はありません。まぁ、餅は餅屋に任せて適宜役割分担するのが寧ろ合理的です。

 国内の、今回触れた愛玩動物の飼料に関する法律は、厚生省が手を退いたところに、環境省と農林省が一応手を出したものの、まだ及び腰の姿勢が見え隠れしている様に感じています。これは何を意味するのかと考えれば、動物は、人間に感染症をもたらす存在、愛玩用途、食材としての用途としての多重性、多義性を持つがゆえに、一つの省庁が完全に取り込む事の出来ない対象であるからでしょう。互いに及び越しとならず、各々が所管する法の精神を徹底させ互いに遣り合うぐらいで面白いと思いますが、それ以前に立法府である国会が及び越しであれば話になりません。

 さて、本法律の第二条の定める愛がん動物とはイヌ、ネコの2種類です。ペットとして飼育される頭数ですが、一般社団法人ペットフード協会が2018年12月25日付けで発表した、平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査結果 (https://petfood.or.jp/topics/img/181225.pdf 一般社団法人ペットフード協会)に拠れば、推計でイヌ が 890万3千頭、ネコが 964万9千頭と他のペットに比して圧倒的大多数と思われ、飼料の経済規模も非常に大きい筈です。イヌ、ネコが各々日本の人口理1割程度存在する訳です。療養食などを除けば基本は大量生産品ゆえ、仮に毒成分等の混入があれば被害も多大なものになると想像できます。

 ヒルズの過剰ビタミンD混入缶詰も迅速に回収されるに至りましたが、この様な法律の規定もあるゆえでしょう。もっとも、現今では不都合な情報を開陳しないでいると、それが明るみに出た際には企業は消費者から不誠実との誹りを受け大打撃を受けますので、迅速且つ公明正大な対応を行うのが常識ともなっていますね。

 この法律は人間の為の食品衛生法の極く一部をイヌ、ネコにも準用したと言うところでしょうか。管轄が厚生労働省では無く、農林水産省と環境省となっている点がちょっと面白く感じました。

 製造時には問題なくとも、販売者が不適切な保管を行い、飼料が変質する可能性もあります。ペットに食べさせる前に、給餌する固形飼料を自分で囓って味見をする飼い主さんも少なくは無いと思いますが、この法律があるにしてもペットを守るのは最後は飼い主さんの愛情に基づく勘所ですね。特定の固形飼料や缶詰を給餌し続ければ、慢性疾患の発症にも繋がる可能性のあることはご承知かと思います。一度ペットの食事内容について、この法律が規定する<最低水準>を超えて、徹底的に見直しをされたら如何でしょうか。