Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               






























 















































































 

院長のコラム 2019年2月22日 


『動物看護師の国家資格化』







動物看護師の国家資格化




2019年2月22日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 ヤマサキ動物看護大学のホームページ (http://univ.yamazaki.ac.jp/univ/) を眺めていましたら、昨日 2019年2月21日付けのニュースとして、「2月20日に、超党派 「愛がん動物を対象とした動物看護師の国家資格化を目指す議員連盟」の設立総会が発足しました」の内容で記事が掲載されていました。関係者紹介のあと、「動物看護師の法整備・国家資格創設に関する要請を行いました。また、日本獣医師連盟、環境省、農林水産省、衆議院法制局より、法制化にむけた取り組みについてコメントが寄せられました。」とありますので、動物の為の看護師が国家資格化される方向に一歩進んだと言うところかと思います。






A Career in Veterinary Nursing The British Veterinary Nursing Association

英国動物看護師協会提供 https://youtu.be/9RXm5ECESR8


麻酔下での歯石除去などの非観血的処置のみの画像ですが、実際には、外科手術を行う

時の麻酔管理、器械係(器械出しとも、術者にメスなど手際よく渡す係)として、また手術の

補助、術後の創面の処置、モニタリング等の、高度な熟練を要する場での参加も求められ

る筈です。単に、<私は動物が好き>程度の甘い気持ではとても勤まりませんね。






 同じ国家資格を与えるならば、諸外国の状況を照らし、ある程度の軽度の獣医療行為 (注射、投薬等)は直接の獣医師の管理監督下になくとも任せられるぐらいの責任を負って貰う、のも良いのかなと思っています。但し、動物看護師2級、1級などの区別を設け、2級看護師資格を得て3年の実務経験の後に1級看護師資格の受験資格が出来、一級看護師は上記のように、注射、投薬なども出来るとすると良いかもしれません。国家資格の建築士に2級、1級の区別がある様なものです。

 問題はそれに準ずる待遇を与える余裕が動物病院側にあるのか、です。本邦の開業獣医師の平均年収がさほど高くなく、一般的なサラリーマンのそれと大きな差が無いことを鑑みると、スタッフを増やすのは厳しい現状にあると言えるでしょう。もっとも、これは経営側院長の資質や経営センスに拠り幅が出ることとは思いますが。

 加えるに、開業獣医の増加に伴い、専門性で差別化を図るべく、高度医療センター、中医学治療(漢方などの東洋医学)動物病院、エキゾチックアニマル専門、特定臓器疾患専門病院、往診専門、はたまた院長のクリニックのような動物・医学情報提供専門クリニックなどが存在しますが、中には24時間診療受付を行う病院も近年その数を増しています。その様な病院で、夜間等に不足する獣医師の代役を看護師が事実上任され、労働時間の超過、獣医師法第17条に抵触する医療行為などが黙認される事態等に陥ることの無きよう、法律の制定に当たってはその辺りの規定もしっかり設けて貰いたいですね。

 国家資格となり、動物看護師が将来的に立派な職業として世の中から広く認知され、誇りを持って溌剌と仕事が出来る様になることを院長は願っています。高度な技術レベルと動物の医学全般についての見識を持つ動物看護師が居れば、獣医師側は欠くことの出来ない良き相棒として手放そうとはしないでしょう。

 海外での動物看護師の実情について触れたいと思いますが、以下、オーストラリアの学校のサイトをご紹介しましょう:

動物看護師とはどういうものですか? What is a veterinary nurse?

https://www.appvoc.com/qualifications-veterinary-nurse/

 「動物看護師の役割は過去10〜15年の間に劇的に変わりました。最も多面的な内容を持つ職業の1つとなったのです。単なる掃除役、動物補助者、受付係から、数多くの技術的分野で獣医を近くでサポートし、獣医の脇で患畜に最善のケアを行う役割に変わったのです。今日、動物看護師にはずっと高い職責が求められまた期待されますが、それはこの仕事をとてもやり甲斐のある、また刺激的なものにしています。

 とりわけ、動物看護師は、全ての患畜に対して基本的な看護を行う事になりますが、下記の様な内容を含むでしょう。

・全ての装置、ケージ、洗濯機、外科用具の洗浄と消毒

・患畜に対する、洗浄、給餌、医療、モニタリング、観察と快適さを保つこと

・麻酔の補助並びにモニタリング

・外科手術の為の患畜の準備

・レントゲン撮影や超音波診断の補助

・現場での医療機材を使用しての血液検査

・採血、カテーテルの留置

・歯垢の除去や歯磨きと言った歯牙の処置

・緊急時の処置順位の決定と応急処置

・飼い主に対するペットのケアに対する教育と情報の提供

・優れた顧客サービス、飼い主の教育と情報の提供

・患畜並びに飼い主についての正確な記録


 これらの仕事を完璧にこなし責任を果たすために、動物看護師の資格を得る為のトレーニングは、これら全ての重要な分野に関する理論的な知識のみならず必要不可欠な実践的手技を併せ持つものでなければなりません。」


 世界的に見て、人と動物との関係が今ほど問い直され、人間にとっての動物の持つ意義が認識される時代は過去には無かった様に院長も感じています。それに伴い、獣医師また動物看護師の社会的責任と役割も今後ますます比重を高めるものと考えます。








 2019年9月11日追記


 既に3ヶ月近く経過しますが、本年2019年6月21日、参議院にて愛玩動物看護師法案が全会一致で可決され、法案の成立を見ました。

 議案要旨については、下記をご参照下さい。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/198/meisai/m198090198018.htm


 法案の中身については下記をご参照下さい。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/198/pdf/s0901980181980.pdf


 いよいよ動物看護師の国家資格が制定されたことになります。法案自体は成立しましたが、法律の施行は3年以内とするとされており、それまでの間に国家試験等含めた煮詰めを行っていくと言うことですね。

 国家試験の受験資格ですが、所定の科目(これはまだ明記されていません)を修めた4年生大学卒業者、或いは都道府県知事が認定した動物看護師養成所にて専門教育を3年収めた者となっています。法律の施行後5年までは各種の救済措置が講じられていますので、その資格を充たすべく、現在動物専門学校等に通われる学生諸氏、或いは既卒の方は注意して勉学に励むべきと思います。動物専門学校側も、国家資格取得に向けたコア・カリキュラムの見直し、指導陣の刷新等を図り、将来の国家資格合格者数の獲得を睨んだ戦略にシフトし、生き残りを掛ける策を講じるだろうと院長は考えています。必然的に動物看護師を目指す学科等は3年制となりますね。院長の感想ですが、それなら施設の整った4年生の大学に入ってきっちり勉学を積むのも手かな、と感じます。

 獣医師仲間の話で時々話題に上るのですが、獣医師とコ・メディカルとの間のバックグラウンドの知識、技量の差が大きく、コミニュケーションの齟齬を来すことが多いですね。国家資格を通じての篩いを掛けられた一定水準の動物看護師が世に出ることは、獣医側にとって大変に歓迎したいことであり、この度の法案成立に当たられた関係各位のご尽力に対し、心から敬意を表するものです。