Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               















































































































































































院長のコラム 2019年2月23日


『動物好きは獣医に向くのか?』







動物好きは獣医に向くのか?



2019年2月23日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 web の相談コーナーで、「自分は動物が好きなので将来獣医師になって動物たちを助けたいが、XX大学への進学を考えている、助言が欲しい」旨の進路相談を求める中高校生が散見されます。今回はこの様な希望や展望はどうなのかについて院長の考えを述べたいと思います。

 最初に、この問い掛けの<動物>の語を<人間>に置き換えたらどうでしょうか。自分は人間が好きだから将来医師になって人間を助けたい、となりますね。

 日本の医者の卵たちは、実際のところ、人間が好きだから医者になりたいと強く意識して医学部に入った訳ではないでしょう。高度な学力を基盤とした上で、将来の社会的地位、経済的余裕を得たいとの功利主義的な動機、或いは医学への強い興味がある、が第一だろうと思います。元々頭脳の優れた人間であれば、最初の動機が人のために人生を尽くしたいとの気持から乖離する不純なものであったにしても、医学教育或いは実際の臨床経験を通じて人間性も涵養され向上し、優れた医療の出来る臨床医或いは研究学徒となり、結果として人間を助ける事が可能になる筈です。







 院長が獣医の道に進んだのは、<動物が好き>なのではなく、<動物のことを知りたい>、<動物の本質を理解したい>とのいわば知的好奇心が後押ししたからだろうと思います。個人的には飼育していたペットにまつわる悲しい経験も幾つかあったのですが、病気の動物を進んで助けたいとの気持はほとんど全く持ち合わせていなかったのが正直なところです。実は院長の指導教官のM先生−当時農学部長の要職にありましたが、定年退官後は日大獣医の教授に就かれました−が、動物が好きだと言って獣医学科に進学してくる奴が良く居るけどありゃ駄目だね、と酒を呑むと仰っていました。動物の好き嫌いなど関係ない、対象を scientist  として冷徹な視点で一度突き放して見ることが出来る、それが大切だ、と言う事です。それでこそ優れた科学的発見、或いは獣医療の道に進むことが出来、結果として動物更にはその飼い主を救うことに繋がる、ですね。

 イヌやネコなどの動物が好き、ペットとして可愛がっていた、乗馬教室に通っているが馬が可愛いくてしかたがない(これらは獣医師から見ると「お客さん」側の視点です)、だから将来動物たちを助ける獣医になりたいんだ、と言うのでは無く、動物園に居る様な動物、或いはそのほかの脊椎動物のことが面白くて堪らない、もっともっと学びたい、知りたいと言う意味での「動物好き」であれば進学する適性は大いにあるだろうと思います。院長側からすれば「こちら側」の人間です。心情的な好き嫌いのレベルでは無く、どうして?なぜ?の、動物の科学についての知的好奇心や探究心が沸き上がってくる者であれば、タフさが要求される6年間の教育課程を遣り過ごす事が出来るでしょう。まぁ、基本的に生物学徒の気(け)の持ち主であれば宜しいだろうと思います。その様な基礎の裏打ちがあって初めて動物を救うことが出来る筈です。

 獣医師と言うと街中のペットクリニックを思い浮かべる方が大半と思いますが、動物園や畜産地帯では大動物相手に奮闘する獣医師が存在します。彼らはホームページなど開設もしませんので一般の方々には仕事の想像が付かないでしょう。

 まぁ、動物(ペット)が好きだから獣医師になりたいというのは、院長や他の獣医師から見ると、今はせいぜい夢を見ていなさいと言うしかありません。

 米国には30の獣医科大学があり、毎年3000名の獣医師が誕生しますが、入学から卒業までも全くラクではなさそうです。ちなみに本邦では毎年1000名程度の獣医師が世に出ます。人間の医者はヒトのことしか知りませんが、獣医師はヒト、動物の区別無く、幅広い視点で医学全般を理解し、野生動物、自然環境保全にもダイレクトに貢献が出来ますので、米国では医者どころではない超エリート扱いとなります。本邦でも若い優れた人材こそ獣医師になるべきだと院長は考えています。表面的な社会的地位、経済的優位性からヒトの医者になろうと若者が志すのは、ちょっと貧乏臭い発想ではないかと正直院長は感じます。



 以下、米国の高校生向きの幾つかのサイトと思われますが、しっかりと作られています。日本にもこの様なサイトが出来ると獣医師とはどのような仕事か、どの様な者に適性があるのかが示されて良いのですが。


How to Become a Veterinarian: Education and Career Roadmap https://study.com/how_to_become_a_veterinarian.html

How to Become a Veterinarian https://www.wikihow.com/Become-a-Veterinarian


   Key Skills Critical-thinking, complex problem-solving, decision-making, speaking, and active listeningskills; proficiency with scientific software; physical dexterity to use x-ray, surgical, and laboratoryequipment


 獣医師になるのに必要なスキル: 批判的思考、複雑な問題を読み解く力、意思決定力、会話力、科学ソフトウェアへの習熟、レントゲン、外科手術、医療器具を使いこなす肉体的な熟練、が必要である。


   While in high school, you should pay attention to your performance in science courses, such asChemistry, Biology, and Physics. Also pay attention to math courses, such as Trigonometry, Geometry, andAlgebra. If you can excel in these areas, it may be a good indicator that medicine is the right field for you.

   If possible, take AP classes. Also, excelling in English class will help, as veterinarians need to be goodat communicating to other people.

   Alternatively, you can pass the GED exam. Passing the GED exam might seem like a good idea, butmany veterinary colleges would like to see that you have completed high school instead.


 高校在学時には、化学、生物学、物理学と言った科目の成績に留意すべきです。三角関数、幾何学、代数学と言った数学科目にも然りです。これらの分野で優秀であれば、あなは医学に向いていることが示されます。

 可能ならば、APクラス(高校で大学教養課程が学べるクラス)たを受講しなさい。英語のクラスで成績が良ければ、獣医は他人とのコミュニケーションに得意である必要があるので助けとなるでしょう。

 高校に行かずともGEDテスト(日本の大検に相当)を受ける手がありますが、多くの獣医科大学はあなたが高校を卒業したかどうかを見るでしょう。









Vet Students in the Real World https://youtu.be/DTv7AByGKI4

オハイオ州立大の学生の大動物実習風景 院長も牧場や畜産農家を巡っての大動物実習の経験

は免許取得の為のカリキュラムの一環として当然経験はありますが、まぁ、簡単に言えば荒くれ仕

事ですね。勿論科学の目で全ての仕事を粛々と遂行します。





 飼い主様向けの営業トークとして、「自分は子供の頃から動物が好きでした、獣医という仕事があることを知り中学生の頃に獣医師になろうと志しました、XX大学卒業後は10年他院で修行し、開業を果たしました、動物や飼い主様の気持に寄り添う獣医として診療を行っています、ワクチンの注射はXX円、避妊手術はXX円で・・・」と優しい語り口で集患を行う開業医も見受けられます。まさか本心でこの程度の事を語っているとしたら院長はM先生同様、こりゃ駄目だと思わず口にしそうです。飼い主様やペットに優しく配慮するのは当然ですが(これもより良き診療のため)、中身は如何にして治療を行い、相手側を幸福にできるのかの冷徹な判断を行う厳しさが無ければいけませんね。何しろ命を扱う仕事なのですから。向こう側とこちら側の峻別が出来ているかが大切ではと思います。獣医師自身が「お客さん」側でしたら自覚の低い獣医師と言わざるを得ません。−ほとんどの開業獣医師はここら辺はわきまえている筈ですが。

 獣医学を通して哺乳動物に関してのトップクラスの深い教養を身に付けたい、卒後は別に開業する気は無いと言うのもアリと思います。動物に関しての、解剖、生理、行動、育種、繁殖、遺伝、病理、薬理、感染症、寄生虫、内科、外科 (他にも多々あります)とイヤになるほどの濃厚な教育(座学と実習)を受けることが出来ますので。

 もっとも、国家資格法制化への動きが始まった動物看護師については、ペットや飼い主様側の視点に立ち、scientist としての獣医師と飼い主様との間を仲立ちする重要な存在として、<動物が好き>であることが逆に大切だろうと思います。

 人間の医療に関してはしばしば訴訟が起こされますが、原告側の主張を見ると何を頓珍漢な非難をしているのかと感じる時も正直あります。医者の側は多忙で只でさえクタクタの中、治療に全力を尽くして無愛想になる時だってあるでしょう。それを患者或いは患者の家族側が非道い対応をされたと訴えるのですが、それでは医者の側ももう遣ってられないとなってしまいます。本当に非道い医者も極くたまには混じっているとは思いますが、医者が逃げ出せば不利益は患者側に当然波及します。どうも診療システム上の態勢にまだまだ不備があると感じますが、カウンセラー、精神ケア担当医師の積極的な介入、或いは看護師側のちょっとした配慮などで、この手の行き違いは大幅に軽減される様に思います。

 同じ様に獣医に関しても飼い主様との間で行き違いが生じることがあるものと思いますが、動物に関する知識の裏打ちの元に、動物看護師には両者を取り持つ存在で居て貰えればと期待したく思います。獣医師は、一人で臨床医、カウンセラー、精神ケア担当役と全てを背負っていますので、単なる動物保定役以上のことに関与して呉れればと院長は考えます。

 当クリニックの院長は、あくまで獣医師側の視点に立ちながらですが(獣医師の味方をすると言う意味ではありません、公平な第三者の立場からものを言います)、飼い主様の疑問や悩みにお答えするとのスタンスです。scientific な観点から疑問や悩みを解決・解消したいとご希望の方にはふさわしいと考えます。「知る、識る」は心を軽快にして呉れます。思而不学則殆、思うて学ばざれば即ち危うし (あれこれ考えているばかりで知識を得なければ賢明な、正しい判断が出来なくなるよ)、です。是非当クリニックをご活用ください。