Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               



































































































































































































































































































































院長のコラム 2019年11月25日 


『イヌの股関節形成不全B 診断』







イヌの股関節形成不全B 診断




2019年11月25日

 英語版のWikipedia のイヌの股関節形成不全の項

https://en.wikipedia.org/wiki/Hip_dysplasia_(canine)

が文献の引用も豊富で比較的に充実していますので、他の文献並びに web からの最新情報も補いながら、これを話の軸として話を進めたいと思います。


 今回は第3回目として股関節形成不全症の診断についてお話しします。



以下、本コラム作成の為の参考サイト:



https://en.wikipedia.org/wiki/Hip_dysplasia_(canine)


https://flexpet.com/hip-dysplasia-in-dogs/


https://ja.wikipedia.org/wiki/ミエロパチー


https://en.wikipedia.org/wiki/Myelopathy



https://www.ofa.org/diseases/dna-tested-diseases/dm







Canine Health Schemes - Hip Dysplasia British Veterinary  Association  2017/11/24

Canine Health Schemes have created a comprehensive visual how-to-guide for

radiographic positioning for the Hip Dysplasia  https://youtu.be/_iirUwKIycA


英国獣医師会BVAの規定するX線撮影方法

同一条件のもとで撮影された数多くのデータを母集団として、当該個体の重症度の位置づけを行う

評価法です。各組織が求める撮影ポーズや条件に軽度の差が存在します。規準通りに撮影した画

像を提出しないと受け取って貰えませんので、(特に大型犬の場合は)獣医師側も楽ではありません。

研修して技法を習得するなどするのでしょう。一種の認定団体商法と言えなくもありません。





 

確定診断



 適切なX線撮影と股関節スコアテスト (下記に説明)が従来からの診断技術です。適切な年齢時に −おそらく成犬では繰り返して- これら2つを行うべきです。早すぎても何も問題が示されない可能性があります。この疾患は相当程度に遺伝の支配を受けるゆえ、子犬を入手する前にその両親の股関節スコアが専門家によりチェックされるべきですし、同様に、繁殖させる前に両親の股関節スコアがチェックされるべきです。この疾患は本質的に遺伝性ですが、両親が申し分のない股関節スコアでも偶発的に発生し得ます。ポリジーン (多遺伝子)の組み合わせ、或いは突然変異で起きる場合もある訳ですね。

 本疾患の遺伝的背景の存在が指摘されている犬種に関しては、信用有るブリーダーと本疾患に専門知識を持つ責任感有る獣医師との連携の上に、子犬を入手することが肝要です。毛づやが良い、顔が可愛らしいなどの判断のみで選んではいけません。野生動物に対しては自然が執り行っている厳しいまでの遺伝子選別を、原点に立ち返り人間の側が行うことで、本疾患からフリーとなる犬種の確立へと繋がり、将来的に苦しむ患畜を減らすことに直結します。この姿勢は、イヌの他の遺伝性疾患に対しても等しくあるべきと院長は考えます。

 さて、診断名として股関節形成不全を考慮する時には、関節内部の状態を評価する為のX線像に、通常は、動物の運動性評価を加味し、その動物のQOLが影響を受けているかどうかを確かめます (股関節スコアテスト)。跛行や股関節の異常や椎骨の利用 (腰を左右に振りながら歩く、モンローウォーク)、走行時や階段昇降時の困難さや動作の減少・忌避は、全て股関節形成不全の問題を抱えていることの証拠となります。X線像と動作のどちらの面も考慮に入れるべきです。と言うのは、X線像には殆ど全く問題の無い場合でも、運動時の烈しい痛みを伴うケースが存在し得るからです。

 股関節形成不全が考えられる場合には、通常、股関節に加え椎骨、四肢もX線撮影します。と言うのは、形成不全の股関節が他の筋骨格系に悪影響を与えていたり、或いは神経学的な問題 (例えば神経損傷)などの未検出だった他の問題を見つけられる可能性があるからです。

 股関節形成不全を (ステージ)分類する為の幾つかの規準化システムがあり、各々定評のある組織から提唱されています (動物の為の整形外科基金 OFA、PennHIP, 英国獣医師会 BVA)。これらのテストの幾つかでは、疾患の状態を明らかにすべく、X線撮影時に股関節をそれら団体が定める基準位置に正しく保定する必要が生じます。規準通りに得られた撮像を組織に送り、評定を得るシステムです。勿論、これらの評価機構に関与せずとも、経験を積んだ獣医師であれば確定診断は下せます。但し、ペット保険会社に保険金を請求する場合には、オペを実施した根拠としてこれらの機関のお墨付きがあると有利に進むかもしれません。






Degenerative Myelopathy onset in GSD dbc1dc 2011/04/08

This was recorded in April of 2010.  Niki is 7 years old in this video. The  beginning

symptoms of DM, or CDRM.  There is a definitive DNA test for this now which  is  around

70 dollars through the University of Missouri:   https://www.ofa.org/diseases/dna-test...

https://youtu.be/WE6XG67YnJY


ニキは撮影時7歳ですが退行性ミエロパチーDM (旧名:慢性退行性脊髄根脊髄炎 CDRM)の症状

が出始めています。ミズーリ大学を通し 70ドルで疾患を鑑別する遺伝子テストが受けられます。


ジャーマンシェパードの退行性ミエロパチー (退行性脊髄症)。下位の脊髄が機能障害を起こし下肢

筋の運動障害・麻痺、及び感覚麻痺を生じます。「腰抜け」症状ですが、基本的に運動器自体の疾

患である股関節形成不全とは、歩行異常の質が違うことが分かります。後肢のふらつきに加え、後肢

でゲンコを握っているのが分かります。遺伝的背景を持ちます。馬尾症候群もミエロパチーの1つで

す。股関節形成不全の診断を進める際にこの様な類似疾患をふるい落とす必要があります。






鑑別診断



 以下の疾患は股関節形成不全に対し非常によく似た症状を示し、診断時に除外すべきです。


  馬尾症候群(即ち下部脊髄疾患)

   前十字靭帯断裂

   他の後肢の関節炎


 離断性骨軟骨炎及び(前肢の)肘関節形成不全は、動物が単に異常歩行を示すだけでは診断が出来ませんし、股関節形成不全により隠蔽され或いはそれと誤診されます。

 飛節(かかとに相当)や膝や椎骨の問題からの痛みと同様、前肢でよく知られる骨関節炎、骨軟骨炎(OCD)、或いは肩や肘関節の形成不全からの痛みを軽減する為に、イヌは後肢を正常時とは異なる利用をしたりその歩行を調整したりすることもあります。股関節形成不全のみが存在すると結論する前に、他の関節や身体の問題を除外することが大切です。股関節形成不全が存在するにしても、他の疾患が共存していたり、その疾患が股関節形成不全に隠蔽されている可能性があるからです。

 歩行異常を来す他の疾患としては、前十字靭帯断裂を抱えるイヌは、決まり切ったように悪い方の足を持ち上げたままにします (これは、股関節形成不全では通常では観察されません)。脊髄 (脊椎骨)の問題を抱える患畜はしばしば歩行時に (麻痺の為に足が上がらず)地面に爪をこすりますが、歩容が協調性を欠き後肢に弱点を抱えることが認められます。椎骨間隙内での椎間板の破裂があれば大変な痛みを持ち、逆に、或る種の脊髄の劣化では脊椎骨 (腰)の痛みを全く示しません (ジャーマンシェパードの退行性脊髄症、ミエロパチー)。

 既に試みられている方も多いかと思いますが、youtube にイヌの歩行異常を来す種々の疾患の動画が掲示されていますので、代表的な疾患に関しては普段から覗いておくと、早期に愛犬の不調の徴候をキャッチする手助けとなるでしょう。院長は、街中を散歩中のイヌの歩容を観察し、このイヌはどこに脆弱性を抱えているか、を常に考え、見抜けるように努めています。






A patient with Elbow Dysplasia at Fitzpatrick Referrals Fitzpatrick Referrals 2016/03/25

Elbow Dysplasia is one of the most common conditions we treat at Fitzpatrick  Referrals.

Dogs of all ages and sizes can be affected, and this problem should be  suspected  in  any

dog with fore limb lameness that has not been caused  by  trauma.

https://youtu.be/ofdNLZjUsH8


肘関節形成不全の患畜

関節構造の異常並びに疼痛から、肘関節を柔軟に屈伸できず、また体重も十分に掛けることかでき

ません。この為、特有の上半身、特に頭部の上下動が観察されます。股関節周りの筋の発達や歩行

リズムには問題が見られず、この症例では問題は前肢にあることが一目瞭然です。外傷を負った訳

でも無いのに前肢の跛行を示すときにはこの疾患を疑います。年齢やサイズに無関係に発生します。

左右どちらの肘が悪いのか皆さんはお分かりですか?






 遺伝的背景を持ち (股関節形成不全症と違い発症を起こす責任遺伝子は絞り込まれています)、広範囲の犬種に発症する退行性脊髄症については、股関節形成不全症と同じく大きな臨床的意義を持ちます。特に本邦では コーギー犬種での発生報告の頻度が高いですね。鑑別診断の必要な他の疾患を含め、後日別項にて採り上げる予定です。

 次回からは股関節形成不全症の治療の話に入ります。