Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               






















































































院長のコラム 2020年6月5日 

ネズミの話18 ネズミと病気 ハンタウイルス感染症T






 

ネズミの話18  ネズミと病気 ハンタウイルス感染症T




2020年6月5日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 家ネズミの筆頭格?であるドブネズミのお話が続きましたが、これから複数回シリーズでドブネズミを中心として他の齧歯類をも含めた感染症の話を展開します。



 他の齧歯類と全く同様に、ネズミは人畜共通感染症となる数多くの病原体を伝搬します。

 この結果、ヒトに、

ハンタウイルス関連感染症 (hantavirus-associated infectiousdiseases)

Q熱 (Q fever)

鼠咬症 (rat bite fever)

レプトスピラ症 (Weil's disease ウェイル病)

クリプトスポリジウム症(cryptosporidiosis)

出血熱 (viral hemorrhagic fever)

腺ペスト (bubonic plague, Black death)


                               などの数多くの感染症を惹き起こします。

 公衆衛生上問題となり得る、ネズミ含めた齧歯類の感染症については、以下の総説が詳しく纏めています。10年前の論文ですがこれを押さえておけば当面は十分だろうと思います。実態を知ると齧歯類をペットとして飼育することが恐ろしくなるかもしれません・・・。

Rodent-borne diseases and their risks for public health

Bastiaan G Meerburg, Grant R Singleton & Aize Kijlstra

Critical Reviews in Microbiology  July 2009 :221-270  Published online: 23 Jun 2009

https://doi.org/10.1080/10408410902989837

https://www.researchgate.net/publication/26313283_Rodent-borne_diseases_and_their_risks_for_public_health

(全文無料で読めます)


 ネズミが関与するこれらの感染症 (これでも人類が知り得た齧歯類感染症の一部に過ぎません)の内、公衆衛生学的に特に重要性を持つものをピックアップし、以下各論形式で触れて行きましょう。内容が多くなりますので数回シリーズに分けます。まず最初に、近頃話題に上ったハンタウイルス感染症について採り上げます。



以下、本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ

https://en.wikipedia.org/wiki/Dipodidae


ドブネズミ

https://en.wikipedia.org/wiki/Brown_rat


レプトスピラ症 Weil's disease

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK441858/


鼠咬症 rat bite fever

http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/003_center/0306_topics/files/050202_files/050125_betten02.pdf#search=%27rat+bite+fever%27


クリプトスポリジウム症(cryptosporidiosis)

http://www.kansensho.or.jp/ref/d15.html


出血熱

https://en.wikipedia.org/wiki/Viral_hemorrhagic_fever

https://ja.wikipedia.org/wiki/出血熱


Q熱

バイオテロ対応ホームページ 厚生労働省研究班

https://h-crisis.niph.go.jp/bt/disease/15summary/15detail/

https://ja.wikipedia.org/wiki/Q熱


ハンタウイルス肺症候群

https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルス

https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルス肺症候群

https://en.wikipedia.org/wiki/Hantavirus_pulmonary_syndrome

Mayo Clinic

Hantavirus pulmonary syndrome

https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hantavirus-pulmonary-syndrome/symptoms-causes/syc-20351838


コクシエラ・バーネッティイ (Coxiella burnetii) 日本細菌学会 

http://jsbac.org/youkoso/coxiella.html


腺ペスト

https://ja.wikipedia.org/wiki/腺ペスト

https://en.wikipedia.org/wiki/Bubonic_plague


トキソプラズマ症

https://en.wikipedia.org/wiki/Toxoplasmosis

https://ja.wikipedia.org/wiki/トキソプラズマ症


旋毛虫症

https://en.wikipedia.org/wiki/Trichinosis

https://ja.wikipedia.org/wiki/旋毛虫症

https://en.wikipedia.org/wiki/Trichinella_spiralis

https://www.cdc.gov/parasites/trichinellosis/biology.html

Trichinella pseudospiralis outbreak in France.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2627956/


広東住血線虫症

https://en.wikipedia.org/wiki/Angiostrongylus

https://ja.wikipedia.org/wiki/広東住血線虫症

最近話題になった広東住血線虫について

https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/news/documents/3page2.pdf







Why you need not worry about a Hantavirus pandemic

2020/03/25 Down To Earth

The world is currently in the grip of novel coronavirus disease (COVID-19).

Now, a man from China’s Yunnan province has died from Hantavirus disease,

fuelling fears of another pandemic

https://youtu.be/lPC1KkrAU1k


コロナ感染症に加え、ハンタウイルス感染症が中国起点に感染を拡大し、いよいよ大変だ

との誤った報道が拡散しましたが、それに対して正しい情報、即ち世界中に流行などしま

せんよと啓蒙するビデオです。この様に迅速なレスポンスで対応する姿勢が必要であり、

また高く評価されるべきと院長は感じます。





ハンタウイルス関連感染症

(hantavirus-associated infectious diseases)




 ハンタウイルスと聞けば壮年以上の獣医師であれば、講義で習った腎症候性出血熱 (Hemorrhagic  Fever with Renal Syndrome; 腎症候群を伴う出血熱 HFRS)をまず頭に思い浮かべる筈です。じつはこれは旧世界での話であり、新世界即ち南北アメリカ大陸では、ハンタウイルス肺症候群 (hantavirus pulmonary  syndrome) を惹き起こすウイルス(同じハンタウイルスだが血清型が違うもの)が含まれます。これは1993年以降に知られた感染症ですので、古い教科書には書かれていない訳です。

 現在、我々が頭を悩ませている中国が感染の起点となったコロナウイルス COVID-19 に関することですが、少し前に今度はハンタウイルス感染症が中国で勃発して大変だとのニュースが世界を駆け巡りました。これが肺炎を起こすとの話も一部では広まっていましたが、院長としては旧世界でのハンタウイルスと来れば腎症候性出血熱であり、肺炎とは無関係だ、どうも話がおかしいと感じていました。この様に、医学に対する教養や素養に乏しい者達が尾ひれを付けて騒ぎ立てる事例が最近富に多くなった様に感じています。

 コロナウイルスの問題に関しても、感染症専門医でもない、マスコミにチャンネルを持つ臨床医(町医者)がコメントするのですが、結局手を良く洗いましょう程度の月並みな内容、或いは彼らが購読している?医家向け非専門雑誌記事の受け売り以上の事は語れず、ああ、この人は研究のけの字も知らぬ経歴だなとすぐに分かってしまいます。そもそもまともな学者であれば、どの分野であれ、マスコミが情報を正しく伝えない危険性を警戒しますので、一般的にマスコミを相手にしません。それでマスコミ側も毎度便利にコメントしてくれるお目出度き?町医者 (勿論医学的に正しい見解を慎重に表明せんとする尊敬すべき方々も一部に確実に居られますが)を重宝する哀しき構図となります、日頃、臨床の第一線で奮闘努力している医者も内心苦々しく感じているのではないでしょうか?

 これは、質の低い、エビデンスに基づかない単なる推測レベルの情報が世の中に拡大・錯綜し、託宣政治を執った邪馬台国の女王卑弥呼と同じく<衆を惑わす>原因となり得ます。日本のマスコミは、勿論例外はありますが、自然科学分野にからきし弱いと見え、科学的な公平な視点から取材対象に鋭く突っ込む能力に欠ける様です。本当の意味での取材ではありませんね。ただ安易に接近出来る取材ソースに飛びついて左から右へと情報を流すだけで、それに対して読者側にコメントさせるなどし、マスコミとしての責任を放擲しています。コロナ関連の日本のマスコミの報道姿勢で改めてこのことを強く感じた次第です。院長としては本コラム執筆に当たっても、海外発も含めた、信頼性高い情報源に広く当たる様に鋭意務めています。

 まぁ、コロナ禍を通じてポータルサイト含め各マスコミの生物学偏差値リストが歴然としました。

尤も、国内或いは海外の感染症専門家の発した提言を元に、為政者が自粛や外出制限、或いは特に制限せずに自然免疫を作らせる策などに出ましたが、それが後日、正しくは無かった事例が次々と明るみになりつつあります。国内の場合も旧帝大系の極く少数の感染症関連の専門家らが政府に対して影響を与えましたが、彼らの試算通りには国内感染数が増減せず、寧ろ自粛等に由来する経済の落ち込みで多数の生活困窮者やはたまた自殺者が増える結果にもなると言われています。詰まりは専門家と称される者達も誤りを犯す訳です。これには専門家同士で互いの学問的な批判を真っ当に行い、次の感染爆発時により適切な対応が取れる様、省みることが必要と考えます。即ち、専門家間でも判断の優劣の偏差値リストが描けたと言う訳です。人の生き死にが掛かっていることですので、これぐらいの厳しいことを言わせて貰っても悪くはないでしょう。








次回はハンタウイルスの生物学的側面にスポットを当てます。