Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               




























































































































































院長のコラム 2020年7月1日


ネズミの話23  ネズミと病気 ハンタウイルス感染症Y






 

ネズミの話23 ネズミと病気 ハンタウイルス感染症Y




2020年7月1日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

ドブネズミを含めた齧歯類感染症のお話の第6回目です。ハンタウイルス感染症の内の肺炎について扱います。

 引き続き

https://www.cdc.gov/hantavirus/outbreaks/history.html 


 からの和訳を掲載します。



以下、本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルス


ハンタウイルス肺症候群

https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルス肺症候群

https://en.wikipedia.org/wiki/Hantavirus_pulmonary_syndrome


厚生労働省研究班 バイオテロ対応ホームページ

https://h-crisis.niph.go.jp/bt/other/28detail/


Mayo Clinic

Hantavirus pulmonary syndrome

https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hantavirus-pulmonary-syndrome/symptoms-causes/syc-20351838


https://ja.wikipedia.org/wiki/アウトブレイク


https://ja.wikipedia.org/wiki/フォー・コーナーズ_(アメリカ合衆国)


CDC

https://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ疾病予防管理センター


対象症例研究とは

http://spell.umin.jp/BTS_CCS3.0.pdf#search=%27casecontrol%27


deer mouse

https://en.wikipedia.org/wiki/Peromyscus_maniculatus








deer mouse

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/33/DiGangi-Deermouse.jpg

6th Happiness / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)


肺症候群を惹き起こすハンタウイルスの第1のキャリアーとなる deer mouse。

カナダ北部の寒冷地を除き北米大陸に広く分布します。清潔好きで飼育も容易

ゆえに実験用動物としても多用されます。頭胴長 8〜10cm 程度の小型の

ネズミです。鹿を連想させる毛色からの英名でしょうか?






Researchers Launch Investigations

to Pin Down the Carrier of  the  New Virus


研究者達は新ウイルスのキャリアーを探るべく調査を開始



 研究者達は、従来の他の全てのハンタウイルスが、例えばマウスやラットと言った齧歯類を通じヒトに感染することを知っていた。それ故、彼らの重要な使命の1つはフォー・コーナーズに棲息する出来るだけ多くの種類の齧歯類を捕獲しこのウイルスを運搬する特異的な齧歯類種を見つける事となった。1993年の6月から8月半ばまで、ハンタウイルス肺症候群に罹患した者が住んでいる家の内外、また同様に彼らが働いていた松林の中や夏場のヒツジの放牧地で、あらゆる種類の齧歯類が捕獲された。近隣の家庭内外の齧歯類もまた比較のために追加捕獲された。リスクを知りつつも、研究者らは捕獲時に防御衣類やマスクの着用はしないと決めた。「我々は呼吸装置を纏って行きたくはなかったんです、皆を怖がらせてしまうし」とインディアン健康サービスの環境疾患専門家の John Sariskyは語った。尤も、CDC にて分析試料を得るべくほぼ 1700 頭の捕獲齧歯類を解剖した時には、防御衣類と呼吸装置は着用された。


 捕獲された齧歯類の中で、 deer mouse  (Peromyscus maniculatus) が従来知られて来なかったタイプのハンタウイルスの主たる宿主であることが発見された。deer  mouse は郊外、半郊外−納屋、離れ屋、材木置き場、人家の中−でヒトの近くにしばしば棲息するので、研究者達は deer mouse がひょっとしてウイルスをヒトに伝達しているのではないかと疑ったのである。調査したdeer mouse の約30%がハンタウイルスに感染している証拠が示された。幾つかの他種の齧歯類も感染していることが調査で示されたがより少ない数だった。


 次のステップは感染 deer mouse と罹患した者が住む家庭との間の関係を突き止めることだった。それ故、調査者達は症例対照調査(Case-controlinvestigation、註:既にある疾患などの Outcome が発生している「症例」と,発生していない「対照」のそれぞれに対して,時間経過をさかのぼって特定の曝露因子をもつ割合を比較し,因果関係を検討する研究デザイン)を開始した。彼らは患者が生活していた<発症>家庭と、<発症していない>近隣の家庭とを比較した。対照家庭とは、感染者が出ていないこと以外は発症家庭に非常によく似た家庭のことである。


 結果だが、第1に、調査者達は発症家庭では対照家庭以上により多くの齧歯類を捕獲した。これは発症家庭ではより多くの齧歯類が住人に接近して棲息していた可能性を示した。第2に、発症家庭は対照家庭に比して家の周りを掃除したり、屋外の畑や庭にて手鋤きで土に触れたり植物を植え込んだりする傾向が強かった。しかしながら、HPSに罹患するリスクがこれらの作業に拠るものなのか、或いは閉ざされた部屋や納戸にこれらの作業に必要な道具を取りに入ることに拠るのかどうかは不明だった。


 1993年11月に、フォー・コーナーズにて発生した感染症の特異的ウイルスが単離された。CDCの特殊病原部局がニューメキシコの患者の出た家庭近くで捕獲された  deer mouse の組織を使用し、それからのウイルスを実験室内で増殖したのである。そのすぐ後に、これとは独立して、米軍感染症医学調査研究所(USAMRIID) もニューメキシコの感染者並びにカリフォルニアで捕獲されたマウスから得たウイルスを培養・単離した。


 新ウイルスはムエルト峡谷ウイルス Muerto Canyon virus と呼ばれ−後日 Sin  Nombre virus (SNV) と改名された−このウイルスが起こす疾患はハンタウイルス肺症候群 HPS と命名された。 数ヶ月に亘り問題となっていたウイルスの単離は、画期的なことだった。この成功は、CDC と USAMRIID にて他のハンタウイルスに関する研究に年余に亘り従事し、調査に参加した全ての関係部局並びに個人の緊密な協力に基づいたものであるし、また近代の分子ウイルス学的検査法の絶え間ない進歩に基づものであった。Sin Nombre virus の迅速な単離に対し、来し方を振り返れば、最初に発見されたハンタウイルス即ちハンタ−ンウイルスの単離には数十年を要したのである。









HPS Not Really a New Disease


HPSは真に新たな疾患ではない



 ウイルス発生源−いつ何処で発生したのか−を特定する努力の1つとして、研究者達は説明の付かない肺疾患で死亡していた者からの肺組織保存資料を調査した。これらの試料の幾つかは Sin Nombre virus に以前に感染した証拠を示したが、これは<最初の>発生が知られる以前にこの疾患が存在していており、単に疾患が認識されていなかったことを示す。


 HPSの他の初期の感染例が、原因不明の成人呼吸逼迫症候群で死亡した者からの組織資料の調査を通じ発見された。この方法に拠り、確定されたHPSの最も早い症例は 1959年 ユタ州の 38歳男性ものと判明した。


 興味深いことに、HPS は疫学界並びに医学界には知られていなかったが、他では認識されていた証拠がある。ナバホインディアンは、多くの者が1993年の発生時に感染したが、彼らの伝統医学は非常によく似た疾患を認識しており、そして実際その発生をマウスと関連付けているのである。驚くべきことに、ナバホの信じる医学は、この疾患を予防する為の公衆衛生上の勧告に一致する策を持っている。


(つづく)