カワウとウミウ 鵜飼い

相談専門 動物クリニック

Ken's Veterinary Clinic Tokyo

                               


























https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ


https://en.wikipedia.org/wiki/Dipodidae







https://en.wikipedia.org/wiki/Caviidae

https://ja.wikipedia.org/wiki/テンジクネズミ科


https://ja.wikipedia.org/wiki/カピバラ

https://en.wikipedia.org/wiki/Capybara


https://en.wikipedia.org/wiki/Hydrochoerus

https://en.wikipedia.org/wiki/Lesser_capybara















羽ばたきロコモーション 海鳥F




2021年7月20日

 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第47回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。

 ウミガメの様な水中羽ばたき型の遊泳ロコモーションを示す各種の動物を引き続き見て行きましょう。

 エトピリカのロコモーションの項 https://www.kensvettokyo.net/column/202106/20210625/ にてもチラと触れましたが、ウミスズメ科とは別の科に属し、潜水動作を活発に行うトリとして、今回はウの仲間をご紹介しましょう。



以下本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/ウ科

https://en.wikipedia.org/wiki/Cormorant


https://en.wikipedia.org/wiki/Great_cormorant

https://ja.wikipedia.org/wiki/カワウ


https://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_cormorant

https://ja.wikipedia.org/wiki/ウミウ


https://en.wikipedia.org/wiki/Flightless_cormorant

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガラパゴスコバネウ


http://www.kankou-hitachi.jp/section.php?code=81

日立市観光物産協会 ウミウ捕獲場

 「全国唯一のウミウ捕獲・供給地であり、ここで捕獲したウミウは岐阜長良川鵜飼いなど全国11箇所の鵜飼地へ供給しています。この捕獲場を一般公開しておりますが、公開は捕獲に支障のない1月〜3月と7月〜9月の期間となります。捕獲するところはご覧いただけませんが、捕獲者の方から直接ウミウの生態や捕獲方法について話を聞くことができます。」


https://en.wikipedia.org/wiki/Cormorant_fishing

https://ja.wikipedia.org/wiki/鵜飼い



https://ja.wikipedia.org/wiki/鵜住居町


https://ja.wikipedia.org/wiki/鵜住居駅







https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/68/Phalacrocorax_carbo_Vic.jpg

JJ Harrison (https://www.jjharrison.com.au/), CC BY-SA 3.0 <https://

creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

Great Cormorant (Phalacrocorax carbo), Victoria, Australia.


カワウ 鵜の目鷹の目で水中へと睨みを利かしているのでしょうか?足には水かきが良く発達

していますね。上クチバシの先端が下に曲がり非常に鋭いです。翼はやや茶色味を帯びます。




https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/Phalacrocorax_capillatus

_-head.jpg yellow_bird_woodstock, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org

/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons

鵜飼の鵜。岐阜市にて。ウミウ。日本では鵜飼いのウはウミウを利用しますが、中国では

数の多いカワウを利用します。カワウと異なり下のクチバシ基部に黄色みがなく、これで

2種の識別が出来ます。




https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/75/Microcarbo_melanoleucos

_Austins_Ferry_3.jpg JJ Harrison (https://www.jjharrison.com.au/), CC BY-SA 3.0

<https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

シロハラコビトウ Little Pied Cormorant  Phalacrocorax melanoleucos


ニュージーランド近海等に棲息する小型のウですが、鵜飼いにも利用されます。カワウ、ウミウ

と共に同じウ属の仲間であり、系統的に近い関係にあります。潜水後に翼を開いて乾燥させる

行動をいずれの種も示します。これは羽根に油分が少なく濡れやすい為と考えられています。






カワウ  Great cormorant  Phalacrocorax carbo



 カワウは、カツオドリ目 Suliformes ウ科 Phalacrocoracidae ウ属 Phalacrocorax に属するトリ Great cormorant  Phalacrocorax carbo  ですが、両極海域を除く各大陸の広い範囲に棲息するトリであり、汎世界的に観察されます。学名の Phalacrocorax  はラテン語のウに相当し、また carbo もラテン語の炭ですので、炭のように黒いウ、の意味になります。確かに、顔面を除けばカラスを連想させる黒いトリですが、背や翼は褐色味を帯びています。繁殖期には頭部が白くなり、腰の両側に白斑が出ます。全長約は 80-101cm、翼開長130-160cm、体重1.81-2.81kg 程度と大型のウです。因みに、飛べないウであるガラパゴスコバネウはウ属の最大種であり、またウミウもカワウよりは大型です。黒い足には水かきが良く発達しています。明るい色のクチバシを持ちますが、上クチバシの先端が下に曲がり非常に鋭く、下クチバシの基部が帯状に黄色く目に付きます。川鵜の名前ですが、河川ばかりでなく湖沼、河口、浅海域でも普通に観察出来ます。ウミドリとは異なり、海水を好まないのは事実の様です。

 カワウは集団で過ごす寝ぐらを持ち、夜間はそこで休息し、明け方には隊列を組んで飛翔し5〜10km程度先の餌場に向かいます。水辺に繁殖コロニーを作り周年繁殖が可能ですが、この群れは数十羽から数千羽にまで達することもあります。一夫一妻で、枯れ枝などを利用して樹上や鉄塔などに皿形の巣を作り雌雄で育雛します。潜水して魚類を捕獲しますが、1分以上、水深10m近くまで潜水することもあります。ウ類の翼羽は油分が少なく濡れ易いため、潜水後に濡れた翼を広げ長時間を掛けて乾かします。

 集団営巣場所では、生木の枝を折り取り利用する為、樹木が広範囲に亘り枯死し、多量の糞により営巣場所や餌場周辺の環境が悪化します。近年生息数が急速に増大し、漁業被害も含め農林水産業被害が拡大しており、2007年6月1日以降は狩猟鳥として指定されましたが、肉や羽毛等含め利用法が無いトリとされ、駆除は進みません。確かにわざわざこのトリを狩猟して料理して食べようとの気持になれませんね。胸肉はそこそこの量が得られそうですが、肉は実際、臭みが強いとのことです。関東では上野の不忍池に集うのが有名ですが、院長の記憶では、不忍池にカエルを増やそうと全国各地からカエルを寄付して貰い池に放ちましたが、数年繰り返しても全く増えず、これはカワウが全滅させたものと判明した、との報道を目にしたことがあります。この先も日本各地で個体数が増加することが予想されます。



ウミウ  Japanese cormorant  Phalacrocorax capillatus



 ウミウはカワウが汎世界的に分布するのに対し、ロシア南東部、朝鮮半島、中国東部、日本のみに分布し、岩礁海岸に生息します。本邦では九州以北の海岸で局地的に繁殖し、繁殖地付近では留鳥として周年生息しますが、寒冷地では越冬のため南西諸島まで飛来した記録があります。全長84-92cm。翼開長133-152cm。体重2-3kg程度、全身黒い羽毛に覆われます。繁殖期にはカワウと同様の色彩模様になります。学名の種小名 capillatus はラテン語 capillus 髪の毛、の形容詞ですので、髪の毛のあるウ、の意味になりますが、皆さんにはそう見えますか?

 カワウが大きな集団繁殖コロニーを形成するのに対し、ウミウのコロニー規模は小さく、海岸の断崖の隙間に枯草や海藻を組み合わせた皿状の巣を作り、5-7月に1回に4-5個の卵を産み、雌雄交代で抱卵します。国内の鵜飼いには本種が用いられますが、中国ではカワウを利用します。本種がカワウより大きいのですが、中国内陸ではウミウが捕獲出来ないこともあるからでしょう。

 三陸リアス線に切り替わる直前に、山田線の鵜住居(うのすまい)駅を通過したのですが、黒屋根の民家が駅のすぐ近く、線路際までぎっしりと建ち並んでいました。リアス線のぴかぴかの駅名表示板がホームに立てられており、白い紙で目隠しされていたことを思い出します。現在の写真を見ると駅周辺が原野化していますが、津波の大被害を受け町が壊滅し、死者・行方不明者 583人を出しました。ウミウの方は断崖絶壁に避難し無事だったろうとは思いますが、この駅名を思い返す度に哀しい気持になります。因みに流出した駅舎は2018年に再建されました。






https://www.google.com/maps/@36.662432,140.7154757,455m/data=!3m1!1e3?hl=ja


日立市の国民宿舎鵜の岬の南東の崖地がウミウの捕獲場所となっています。ここで捕獲さ

れたウミウは岐阜長良川鵜飼いなど全国11箇所の鵜飼地へと供給されます。



https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/kenmin/download/documents/140210_05a.png


断崖の上に小屋掛けし、ウの囮を置いておくと、休憩にウミウが訪れますが、小屋(鳥屋とや)

からカギ棒を出して足首に引っかけて捕獲します。待ち受け式の猟ですが、カモを捕獲する場合

も似た様な待ち受け猟を行う国内例もあります。その際にも生きた囮を利用します。




【鵜飼プロモーションビデオ(フル)】「一期一会の感動絵巻 ぎふ長良川の鵜飼」

2020/05/11 岐阜市公式チャンネル

岐阜市長良川において1300年以上続く、「ぎふ長良川の鵜飼」。

自然を相手にする鵜飼漁と、観覧客との「一期一会」の一幕をご紹介します。

https://youtu.be/CbI_wAZBt3c


院長は犬山の霊長研に仕事で出た折に、<木曽川鵜飼い>を、乗船せずに川辺りに貼り付い

て見ていましたが、鵜飼いがなかなか始まらず、それまでの間は花火船が出たり、踊り手の舞

う船が出たりしていました。鵜飼いが始まると短時間で終わって仕舞い、あれ?と感じました。




Fishing with Birds | Wild China | BBC Studios 2011/02/02 BBC Studios

https://youtu.be/JNEplaYZtpI


中国のカワウは良く調教されており、自由に放たれて魚を捕獲すると自分で船に戻ります。

中国人は家畜化に関して日本人以上の知恵を持っている様に見えます。




Cormorant Fishing in Guilin, China 捕魚 2013/02/16Evelyn Leung

Fishermen trained the Cormorant (a kind of bird) to catch fishes in rivers. A snare is

put around the neck so that the Cormorant cannot swallow the fish it has caught and

has to spit it out to give to the fisherman. https://youtu.be/uzZ9RHTcFlc


中国の鵜飼いでは日本と異なりカワウを利用します。日中に行い、魚をおびき寄せる

為のかがり火を使いません。日本の儀式化、観光化した鵜飼いとは異なり、生活の

為の漁法として各地で存続しています。大きい魚も捕まえさせます。






鵜飼い Cormorant  fishing



 鵜飼いは、現代でも中国や日本などで行われている漁法ですが、日本では『日本書紀』や『古事記』に記述が有り、平安時代からは貴族や武士などが鵜飼見物を行ってきた歴史もあり、現代でも各地で観光としての鵜飼が行われています。一方、ヨーロッパ、特に英仏ではで 16世紀から17世紀 の短期間、漁の為では無く貴族のスポーツとして行われました。ギリシアとマケドニア国境の湖では現在も古来からの鵜飼いが行われています。中国の鵜飼いは日本から伝わったとの見解がありますが、中国ではサギを利用したり、カワウソを使う同様の漁法も存在した模様です。 日本では野生個体を捕獲したウミウを使うのに対し、中国では家畜化されたカワウを使います。これは中国の広大な内陸部ではウミウが供給され得ないからでしょう。

 日本の鵜飼いに使われるウはウミウであり、国内の2箇所を除く11か所すべての鵜飼は、茨城県日立市の鵜の里で捕獲されたウミウを使用しています。トンネルを抜けると鳥屋(とや)と呼ばれる海岸壁に設置されたコモ掛けの小屋まで一般人も見学に訪問できます。鳥屋の前方に放した囮のウミウにつられ休憩に近寄ってきたウミウを、鳥屋の中からかぎ棒を出し、ウミウの足首を引っかけて鳥屋に引きずり込み捕獲します。野生のトリですので捕獲個体に対しては環境省に捕獲申請を行うことになる筈です。雌雄捕まえて繁殖させる手もありそうですが、飼育個体は野性が減少し漁に支障が出るとのことですが、中国のカワウは人間の完全な飼育下にあっても漁が可能ですので、伝統を守るとの意味合いが強いのかも知れませんね。

 岐阜県岐阜市の長良川鵜飼ならびに関市の小瀬鵜飼は、宮内庁式部職である鵜匠(風折烏帽子、漁服、胸あて、腰蓑を身に着ける)によって行われています。これは世襲制の国家公務員です。長良川の鵜飼は1300年ほど前まで起源をさかのぼり、近世に至るまで時代の権力者の庇護下に有りました。明治維新後は1890年に宮内省主猟寮属となりました。特に宮内庁の御料場で行われる8回の漁を御料鵜飼と呼び、獲れた鮎は皇居へ献上されるほか、明治神宮や伊勢神宮へも奉納されます。

 中国では日中も鵜飼いが行われ、カワウは良く調教されており、小舟から自由に放たれたウは魚を捕獲すると自分から船に戻ります。どうも動物の家畜化に関しては中国人の知恵が一枚上を行っている様に院長には思えてしまいます。国内では夜間にかがり火を焚いて鮎を集め、それをウに捕獲させる方法を取ります。ウの首の付け根には紐が巻かれており、一定以上のサイズのアユは飲み込めず、鵜匠はそれを吐き出させて漁獲とします。ウの側も折角捕まえた魚を人間に横取りされてしまう訳で、次第にやる気を無くします!ので、適宜休みを与えながら調子の良さそうな個体を選んで漁に出る訳です。嘗ては徒歩鵜 かちう、と言って川岸を歩きながら紐に繋いだウ、に魚を捕らせる漁法もありましたが今は廃絶しています。これは、高級キノコのトリュフを採掘する際に紐に繋いだブタを連れて行き、ブタの嗅覚でキノコを見つけさせる姿を連想もさせます。

 有名な松尾芭蕉の俳句、

 おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉   芭蕉  (真蹟懐紙・夏・貞享五)、ですが、句の前文を見ると、鵜飼いがとても面白くて他の人にも見せてあげたいぐらいだ、立ち去るのが名残惜しい、とあり、コキ使われるウを哀れんだ、との解釈は誤りになります・・・・。